国の食品スーパー業界
HDS以外は全て負け組
2022年以降の食品やエネルギーの価格急騰と生活者負担の拡大を追い風に、低価格を強みとするハードディスカウントストア(HDS)が世界の食品流通業界で躍進している。
HDSの成長が著しいのは欧州だが、その中でもイギリス(英国)での好調が際立っている。
英国の食品スーパー業界は、最大手のテスコ(Tesco)を筆頭とした4強時代(上位4社の寡占度が7~8割)が長く続いてきたが、ここ数年でドイツ(独国)発祥のHDSであるアルディ(Aldi)とリドル(Lidl)の2社が猛追して、業界地図を塗り替えた。
2013年と2023年のランキングを比較すると(図表1)、HDSの2社とネットスーパーのオカド(Ocado)だけが順位と市場シェアを上げ、既存の大手食品スーパー全てがシェアを落とす結果となった。
HDSの特徴は、徹底したコスト合理化に加え、簡素な設備や陳列、取扱商品の絞り込み(加工食品中心)、手ごろな価格のプライベートブランド(PB)商品の充実などだ。アルディの販売商品の約80%はPBと言われる。
しかし、これらの手法は決して目新しいものではない。アルディの独国での創業は1961年で、英国1号店開業も1990年だ。先進技術を駆使したスタートアップ企業ではない。
流通業界では長らく、スケールメリットによって商品調達力を追求する(安く仕入れる)ことが最も重要な差別化戦略であり、業界の構造は、多くの企業がひしめく原始状態から大手寡占化に向かうという「進化論」が定説であった。
ところが、HDSは英国をはじめ欧州で逆転劇を起こし、(結果として)大手寡占化を後退(低下)させた。このことは多くの流通関係者を驚愕させた。