働き方の改善に向けて取り組むも
サビ残の増加や若手の離職の懸念

 まず、建設業界で元請け業者と呼ばれるゼネコン大手5社(鹿島建設、大林組、清水建設、大成建設、竹中工務店)の現在の働き方を見てみよう。

 下表は、全業界と大手ゼネコン5社の平均残業時間を比較したものだ。5社の平均残業時間は50.33時間/月となり、全業界平均(23.39時間/月)の約2.2倍という結果になった。

 近年は働き方改革による就業環境の改善が進み、業界を問わず残業時間は減少傾向にあるが、ゼネコン大手5社の残業時間は依然として長いことが分かった。残業時間の上限規制適用が約半年後に迫り、「2024年問題」への対応が急がれるなか、実際に働く社員はこの現状をどのように受け止めているのか。

 OpenWorkに集まったゼネコン大手5社の社員クチコミ(原文ママ)を見てみよう。

「残業時間規制の建設業への適用が迫る中、有効な対応策を見出せていない。絶対的な仕事量が多く、生産性の向上で太刀打ちできるレベルではない。こなしきれない仕事は中間管理職ポジションが休日にサービス残業で捌いている現状があり、若手がずっと働き続けたいと感じるのか疑問」(総合職、現職、男性、鹿島建設)

「近年、働き方改革の影響により現場の業務改善に対する士気は高く、2024年度の残業時間規制に向けてなんとかしようとする意識は感じられる。反面、若年〜中堅層の業務負担が軽くなっている訳ではなく、業務密度・負担が大きくなっていると声も出ている」(建築職、現職、男性、大林組)

「社会情勢もあり、会社として残業時間の低減に寄与する取り組みを色々と模索しているようだが、現実として仕事量は変わっておらず(むしろ増えている)、根本的な解決には至っていない。2024年問題として言われている月45時間以内、年間360時間以内の条件は、どう考えても達成できる環境ではない。結局はサービス残業が増え、むしろ企業が得する結果となると思う」(設計、現職、男性、清水建設)

「労働基準法の改正により残業時間の上限規制が設けられたが、現在建設業は2024年まで猶予されている。そのため現場の生産性向上を目指しているものの、2024年までに年間720時間以内を全員が達成するのはかなり厳しいと感じる。法令上罰則もあるため、無理やりにでも達成する必要があるため、今後色々とボロが出てくるのではないか」(総合職、現職、男性、大成建設)

「2024年からの年間残業上限360時間を見据えて残業時間を少なくする目標を掲げてはいるものの、現場においてはトラブル対応や人手不足等もあり、月80時間を守るのが精一杯と感じる。一方内勤では部署にもよるが土日休みは当然、日々の残業時間も少ない」(施工管理、現職、男性、竹中工務店)

 社員クチコミを見ると、「労働時間の短縮に向けて社外へのアウトソーシングや業務の効率化を進めている」といった肯定的な声が見受けられた。企業が働き方改革に関連する法律を意識し、働き方の改善に向けて取り組んでいることが分かる。

 一方、課題や危機感を抱いている様子もうかがえた。建設業界での仕事は、建物の完成までに発注者や建設地の地域住民、職人など関わる人が多岐にわたり、「自分の思い通りに時間を調整しにくい」などの声も見受けられる。業界の特徴や構造上の課題を踏まえた根本的な解決策が打ち出されていないことに対し、実際に働く社員からサービス残業の増加や若手の離職を懸念する声が見られた。