メリット(5)
幸福感の増進

 一般に、幸福感は所得の増加と正の相関関係があるが、一定の所得を超えるとそれ以上所得が増えても幸福感が増進しない傾向があることが知られている。一つには、高所得の仕事は要求される水準が高く、ストレスレベルが高いことがあろうが、もう一つには所得を得るための労働時間が、余暇の時間を圧迫していることが原因として考えられる。

 国民が生産を犠牲にせずに、余暇の時間を増やす余地を作ることは好ましい。テレワークの徹底とこれに伴う生産性の向上とは、余暇の時間を作る上で重要だ。仮に、1人当たりGDPが増えなくても、余暇の時間が増えるなら国民の幸福感は増進するはずだ。

 テレワークでは人との接触が減ってしまうと思うかもしれないが、時間に余裕が生じることから生まれる人との出会いもあるはずだし、さまざまな地域単位でリアルに会って仕事ができるような場を設けることも工夫によって可能だろう。

「9~17時の在社はクレイジーだ!」とまくし立てる動画のZ世代女子のメッセージを、実質的な意味に分解して、(1)時間の使い方を合理的にするべきだ、ということと、(2)生産性を上げることに社会全体でもっと真面目に取り組むべきだ、ということなのだと理解すると、実は日本の社会が今後進むべき道を示唆している。

 徹底的に「真に受けてみる」といいことがあるのではないかと思った次第だ。