変化が激しく先行き不透明の時代には、私たち一人ひとりの働き方にもバージョンアップが求められる。必要なのは、答えのない時代に素早く成果を出す仕事のやり方。それがアジャイル仕事術である。『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社)は、経営共創基盤グループ会長 冨山和彦氏、『地頭力を鍛える』著者 細谷 功氏の2人がW推薦する注目の書。著者は、経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)でIGPIシンガポール取締役CEOを務める坂田幸樹氏。業界という壁がこわれ、ルーチン業務が減り、プロジェクト単位の仕事が圧倒的に増えていくこれからの時代。組織に依存するのではなく、私たち一人ひとりが自立(自律)した真のプロフェッショナルになることが求められる。本連載の特別編として書下ろしの記事をお届けする。

問題解決ができない「ダメ上司」のたった1つの特徴Photo: Adobe Stock

具体と抽象の往復による問題解決は、
もはや一般常識

 過去20年ほどの間に、問題解決に関する書籍が大量に出版され、問題解決の講座も増えて簡単に受けられるようになりました。また、問題解決をするためのベーススキルである抽象化思考などもかなり一般化したといえます。

 その結果、かつて見られた「売上を上げろ」「コストを下げろ」という無意味な指示を出したり、現場で見たたった1つの事例をもとに全社へ指示を出したりするダメ上司は激減したのではないでしょうか。

ダメ上司は、問題の解像度が低い

 現代はデジタル革命が起きたことでビジネス環境が大きく変わっています。

 たとえば、お客さんがさまざまな情報にアクセスできるようになった結果、飲みニケーションで関係性を築くだけでは、商品やサービスが売れなくなりました。お客さんのニーズを解像度高く理解して、それに合わせた商品やサービスを提供できなければ、Eコマースに代替されてしまいます。

 現場の営業担当者がそのような環境下で日夜苦労している中、時代錯誤の精神論を説いたり、解像度の低い問題把握で解決策を提示したりしても、現場からはダメ上司の烙印を押されるでしょう。

問題の解像度が高ければ、
具体的な固有解に落とし込める

 今の時代にまともな問題解決をしたければ、問題の解像度を高めるしかありません。中途半端な現場視察をするのではなく、自ら現場でヒアリングを繰り返し、問題の解像度を上げましょう。

 そうすれば、中途半端な方針ではなく、現場が本当に困っていることに対する具体的な固有解を出すことができるでしょう。もし、それができないのであれば、中途半端に介入せずに、問題解決は現場に任せましょう。そのときの上司の役割は「守らなければいけない原則を示すこと」と「現場に必要なリソースを提供すること」の2点です。

「アジャイル仕事術」では、問題を解像度高く把握して、固有解に落とし込む方法以外にも、働き方をバージョンアップするための技術をたくさん紹介しています。

坂田幸樹(さかた・こうき)
株式会社経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)、IGPIシンガポール取締役CEO
早稲田大学政治経済学部卒、IEビジネススクール経営学修士(MBA)
大学卒業後、キャップジェミニ・アーンスト&ヤングに入社。その後、日本コカ・コーラ、リヴァンプなどを経て、経営共創基盤(IGPI)に入社。現在はシンガポールを拠点として日本企業や現地企業、政府機関向けのプロジェクトに従事。細谷功氏との共著書に『構想力が劇的に高まる アーキテクト思考』(ダイヤモンド社)がある。『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社、2022年6月29日発売)が初の単著。