「優秀な上司か、無能な上司かは、部下ができなかったときの指導にあらわれる」
そう語るのは、これまで3500社以上の導入実績がある組織コンサルタントである株式会社識学の代表取締役社長・安藤広大氏だ。「会社員人生が変わった」「誰も言ってくれないことが書いてある」と話題の著書『とにかく仕組み化』では、メンバーの模範として働きつつ、部下の育成や業務管理などで悩むリーダーたちに、仕組み化のメリットを説いた。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、「できる上司」か「無能な上司」かを見極める、たった1つの方法を解説する。(構成/種岡 健)
あなたの身近な「怖い人」
最初に質問があります。
「あなたの仕事人生で、『怖い人』はいましたか?」
少し考えてみてください。もしかすると、
「最初の上司がパワハラぎみでした」
「いま、いつもイライラしている本部長がいます」
という答えが返ってきそうです。
ただ、ここで考えてほしいのは、そういう単純な怖さではありません。
もっと本質的なことです。
話の口調は優しいし、つねに笑顔で、腰も低くて話しかけやすい。そんな人が上司や同僚でいると、働きやすいですよね。
ただし、その人の仕事が次のようなら、どうでしょう。
「仕事で求められる基準は高い」
「中途半端な仕事では評価してくれない」
「フィードバックが的確で反省する」
そういう人が、本質的な「怖い人」です。
上司や先輩で、そのような人は周りにいなかったでしょうか。
日常生活においては優しいが、仕事となると線引きをして、明確な判断軸を持ち、厳しさを見せる。
そういう上司のもとで働くと、
「手を抜いたことを見抜かれる」
「言い訳が通じない」
「ルールを守らないと指摘される」
という指導を受けます。
基準が明確で、誰が見ても「理不尽な部分」がありません。
それが、ここで言いたい「怖い人」の姿です。
その代わり、部下はきちんとルールを守っている限り、何も言われることはありません。そして、いい仕事をして圧倒的な結果を出すと、正しく評価をしてくれます。
その厳しさを「本当の優しさだ」と部下が正しく認識できると、一気に成長できるチャンスです。
厳しくするということは、「笑顔を見せるな」「語気を強めろ」などという低レベルの話ではないのです。
「人格否定」をしてはいけない
ただ、「怖さ」とだけ言うと勘違いされます。
そこに「いい怖さ」と「悪い怖さ」があるからです。
「悪い怖さ」というのは、「人格否定」などをすることです。
「これができないって、いままでどんな教育を受けてきたの?」
「前も同じこと言いましたよね。頭が悪いんじゃない?」
と、精神的に追い詰めるように人を責めると、パワハラになります。
特に、男性同士のコミュニティで、後輩をイジるような方法でコミュニケーションをとってきた人は、この過ちを犯します。
友達との人間関係のやり方を、職場の同僚にもやってしまうのです。
無能な上司かどうかを見極めるには、目標が未達だったあと、頑張って目標をクリアしたときの態度で見極めましょう。
無能な上司は、
「やっとできたのかよ」
「はじめからそうやってよ」
というように、相手を責めるような評価を与えます。
これは、「不器用さ」という言葉だけでは済まされません。
昭和の時代や平成初期くらいまでは許されたかもしれませんが、もう、ダメです。強制的に変えなくてはいけません。
大企業では、マネジメント研修やハラスメント研修が実施されています。
しかし、一部の中小企業や少人数の組織では、それが放置されていると思います。
だからこそ、本来の意味の「怖い人」を知っておかないといけないのです。
厳しさの意味をはき違えないことです。
(本稿は、『とにかく仕組み化』より一部を抜粋・編集したものです)