「ついていけない」、桁違いの資金力でまともな勝負ができるか

 中国から人や資本がどんどん入って来る大阪のこの変化に、市内在住で工場経営者の原口啓介さん(仮名)は「正直ついていけない」と漏らす。「『中国資本と組めばカネになる』、そういう構図がたまらなく嫌や」と心中を吐露する。

 日本人の生活者とは桁違いの金を持っている中国人が、弱り切った今の地元経済を見透かし買いたたき、大阪をほしいままにするのではないか――。原口さんは「ザルのような日本の法律でフェアな競争などできるのか」といい、アンバランスに対する不安を訴える。

 もとより大阪は「もうかってまっか」の経済原理で動く街である。本来なら、「ウィンウィンの経済関係」で収まればヨシとしてきた土地柄だが、“商売の物差し”だけでは効果を測ることが難しくなってきた。「街全体の持続可能な発展」が見込めるのかという問いは、原口さんをはじめ多くの住民に共通する思いだろう。

 例えば不動産取引については次のように語る人もいる。

「賃貸借では、宅建業法上必要な重要事項の説明も、中国人の借り手が『時間がかかるから』という理由で省略したり、中国人が貸主の場合、賃貸借契約書すら準備しないといったケースもあります。売買においては現金でまとめて購入するので、あっという間に街の景観が変わるというのも特徴です。法規法令に違反するような取引も見られるようになりました」(現地の大手不動産会社職員)

 このように好き放題にやられてしまっては、法治国家であるはずの日本の土台が揺らいでしまう。

 確かに今の日本は、中国資本をはじめ海外の資本や人材を抜きには将来の展望を描くことはできないし、ダイバーシティーそのものの流れは止めることはできない。だが、原口さんが嘆くように、自分たちの都合しか考えない「目先の利益」が優先されれば、それは地域全体、国全体の損失になってしまう。

「持続可能な発展」は世界的潮流だ。刹那的な「もうかってなんぼ」の発想からの転換が待たれている。