芝園団地の祭りを活性化するために
今すぐできること

 まず気になったのは、お祭りのアナウンスが日本語だけだったことだ。会場では英語や中国語でもアナウンスし、住民に伝えるべきだろう。まず、言葉の壁があるので、目の前で行われている内容が海外の方には理解できないこともある。芝園団地内で見かけたゴミ回収場所のポスターなどは、必ず3カ国語の表記があった。しかし、お祭りのポスターは、日本語のものしか見なかった。

ゴミ捨て場の注意書きゴミ捨て場の注意書きは、日・中・英の3カ国語

 次に、芝園団地に住む外国人住民がたとえ自治会に所属していなくても、郷土の踊りや演奏、または外国語クイズなど、日本人スタッフと共にイベントに参加してもらうことだ。自治会には、役員の中に外国の方もいるとのことなので、まずはリーダーとしてコーナーの運営担当を行うことができるはずだ。

 さらに、祭りで食品を扱うと事前準備に時間がかかるので、簡易なゲーム系の屋台で日本人と外国人がチームで運営に参加する。たとえば、スーパーボールやヨーヨー釣り、ボールによる的当て、輪投げなど、祭りにふさわしいイベントで交流を深めていく。

 当日は駐車場にいると、商店街の外国食材店や飲食店、スーパーへの買い物でバッグをいっぱいにして持ち運び、東南アジアの方と思われる方の運転する車が出たり入ったりしていた。また、ベンチでは複数の中国人の方がにぎやかに談笑していて中国語の会話が聞こえてきた。しかし、その前を日本人のご老人が買い物カートを引いて通っても素通りで、交流はまったくない。

 最近はグローバリゼーションと言うようになったが、90年代より前は国際交流と言っていた。イベントの準備や当日に向けて、共同作業で時間を共有していくことで、外国の方と日本人が話しながらコミュニケーションの度合いを深めていく。祭りは、コミュニケーションの第一歩だ。その後、団地内で会った際でも、知っている顔同士であれば挨拶程度からでも会話が始まるであろう。

 オリンピック精神をあらわす言葉で、「参加することに意義がある」という有名なフレーズがある。これは1908年のロンドン大会で生まれた。当時、“近代オリンピックの父”、ピエール・ド・クーベルタンIOC会長が、アメリカの選手団に随行したアメリカ合衆国監督教会のエチュルバート・タルボット主教(司教)の発言を基に演説で述べたものだ。競技での勝ち負けの前に、まずは参加することで国や選手同士の歩み寄りを促し、強固な関係性や平和を築く重要度を説いた言葉である。

 団地の祭りも同じで、まずは「参加することに意義がある」。一緒に共生をはかるには、その地域が温かく門戸を広げて、日本人も外国人も同じ方向を見て互いに尊重し合いながら交流していく。本当の「共生」は、そこから始まるのではないだろうか。