川口芝園団地に住む中国人は30代エリートファミリー層
日本人住民は高齢者世帯が多い

 コロナ禍でいったん、外国人の帰国などがあって下がったが、今では外国人比率が56%となり、そのほとんどが中国人といわれる。住んでいる中国人は、エリートの30代ファミリー層でIT会社の技術者が多い。これは、URの入居審査が厳格であり、申込者本人の平均月収額が基準額以上であることや外国人は定める資格を持つ外国籍でないといけないからだ。中には、社宅として会社が手配している世帯もあると聞く。しかし、50平方メートル程度の部屋が多いこともあり、子どもの成長につれ、他の大きな面積の賃貸や住宅購入で引っ越してしまう。その一方で、日本人は高齢者が多く住んでいる。

図_川口市芝園町(芝園団地)、日本人と外国人の人口推移川口市芝園町(芝園団地)、日本人と外国人の人口推移。青が日本人、赤が外国人、緑は外国人比率。川口市「町丁字別人口世帯数の推移」に掲載された、各年1月1日時点の人数をもとに筆者作成 拡大画像表示

 芝園団地の自治会は、2018年に多文化共生の優秀な事例として、国際交流基金から「地球市民賞」を贈られた。交流イベントの開催、中国語のSNSを活用した情報発信など、自治会の地道な取り組みの結果、中国人の自治会役員も誕生し、共生の意識の根付く活気にあふれる団地であることが受賞理由だ。

芝園団地内の貼り紙芝園団地内の貼り紙は、日本語だけでなく中国語でも書かれている

 川口市でも、2023年から2027年度に向けて「第2次川口市多文化共生指針改訂版」を策定した。日本人と外国人の住民が多様な価値観を認め合いながら、ともに学び、働き、安心して暮らしやすい、そして気軽に訪れて快適に過ごしやすい多文化共生社会の実現を目指している。

 しかし、その最先端で長い間、中国人と日本人が共生してきたはずの芝園団地を取材すると違う側面が見えてきた。