北九州の人気チェーン「資さんうどん」のDXを支え、伴走している九州のホームセンター「グッデイ」。DX成功企業として注目される同社だが、15年前まではメールもホームページもないアナログな会社だった。2015年にクラウドへ舵を切り、約10年で売り上げ26%増を果たしたグッデイがどのようにDXを進めてきたのかを紹介した前編に続き、後編では、LINEミニアプリの活用など、POSのクラウド化によって広がった販促・マーケティングの可能性、そして、ChatGPT(GPT-4)をどのように活用しているかに迫る。(ノンフィクションライター 酒井真弓)
小売業界で「新しいことをやってみよう」はなぜ難しい?
クラウドPOSシステム導入でリアルタイムなデータ活用が可能に
新しいことに挑戦しようとすると必ず足を引っ張るのが、昔ながらの融通の利かない基幹システムだ。多くの場合、永遠に手を入れ、工事が続き、まるでサグラダ・ファミリア状態になっていて、自分たちで手を入れるのは困難だ。
そうなると、結局ベンダー依存からも抜け出せない。「何を実現したいのか」より先に「いくら出せるのか」が立ちはだかって、できることは限られてしまう。小売のDXを阻む元凶はここにある。
理想は、売り上げや販売実績をリアルタイムに分析し、顧客軸のマーケティングを展開することだ。前編で、90年代から作り込んできた店舗の基幹システムをクラウドに完全移行し、スマホやタブレット端末からもアクセスできるようWebアプリ化を果たしたグッデイは、次なる牙城、POSシステムのクラウド化に乗り出した。
POSシステムとは、日々の商品販売実績を把握し、売り上げや在庫を管理するための仕組みで、小売の経営には欠かせない存在だ。しかし、ベンダーによって一昔前に作り込まれたオンプレのPOSシステムは、今となっては柔軟性に欠けていた。
「以前のグッデイは、各店舗に1台マスターレジを置き、1日1回のバッチ処理で本部に販売データを送信していました。しかし、それではデータをリアルタイムに経営や店舗運営に生かすことができません。現場からもさまざまな要望が出ていましたが、POSシステムに手を入れようとすると高いカスタマイズ料が発生し、簡単な開発でも3~4カ月はかかってしまう。しかも、実装できたところで新たな価値を生み出すかというと、そうでもありませんでした」(柳瀬さん)
それならいっそ、オンプレのPOSシステムはやめて、新たに柔軟性の高いクラウドPOSシステムを導入してしまおうと判断したのだ。