金融教育の浸透を阻む
日本独特のお金の価値観
政府が旗振り役となり、若い世代の金融教育に力を入れている。しかし、日本人が抱いている“お金に対する勘違い”が、その浸透を阻んでいるという。
「特に多いのが“投資はギャンブル”という固定観念です。そもそも親世代は、資産形成はもちろん、お金に関する正しい教育を受けていないので『投資はよくわからない』と、敬遠しがちです。加えて、株で大損した人の体験談など、ネガティブな情報が世間にあふれています。実際には、無理なく堅実に長期投資をして資産形成をした人もいるのに、成功事例はなかなか世に出回らない。この状況が、日本人が抱く、投資のマイナスイメージにつながっているのです」
そのほか「お金の話はタブー」という日本人の共通認識も金融教育の遅れを招いている、と市川氏は指摘する。実は、日本を一歩出ると、お金の話は比較的ポピュラーな話題だという。
「例えば、アメリカは金融教育先進国と呼ばれていますが、学校の授業は選択制なので金融について学ぶ学生もいれば、そうでない学生もいます。それでも、家族間や友人、会社の同僚同士で収入や投資、資産形成の話題が飛び交うので、年齢に関係なくお金について考える機会が多いのが特徴です。アメリカの社会人1年生は、入社してすぐに先輩から『投資を始めて、資産形成をしたほうがいい』というアドバイスを受けるそうです」
家庭内、ひいては日本に金融教育を浸透させるには、お金の話をタブーにしない環境づくりをする必要がありそうだ。
また、アメリカの株式市場は右肩上がりで成長をしてきたため「投資をしなければ資産が目減りする」という感覚が根付いている。そうした文化的背景も、アメリカが投資大国に名を連ねる理由だという。
「一方、我々日本はこの30年間、株価が大きく上がらず、物価も上がりませんでした。そのため、新卒の初任給は横ばいで、賃金が上がらなくても生活できる状況だったんです。しかし、物価が急上昇している今、政府は少しずつ賃上げを目指しています。こうした日本国内の経済状況の変化も『貯蓄から投資へ』という、政府の方針転換につながっているようです」