資産運用は
親子で学ぶのがベスト

 お金の知識を正しく身につければ、自分や家族の生活を守る武器になるが、日本人の多くは知識が不足している。そこで、市川氏に家庭でできるお金の教育方法について聞いた。

「小学生のお子さんなら、親子で『お金とはなにか』『経済とはなにか』という基礎的な部分から学ぶのも家庭の金融教育です。そのほか、キッザニアのような子ども向けの職業体験施設に連れていき、仕事の対価として報酬を得る体験や、家でお手伝いをしてもらいお小遣いを渡す、などの方法もおすすめです。特に後者は、生活の中でお金の大切さを実感できます」

 そして、我が子が自分で稼いだお金をどう使うのかも一緒に考えてほしい、と市川氏。親が子にお金の使い方を教えるのも、れっきとした金融教育のひとつだという。

「投資とは違い“お金の使い方”は、親が子に教えられるお金の知識です。子どもたちは、消費(生活に必要な買い物)と浪費(ムダ遣い)の区別ができないので、そのときの感情に任せて品物を欲しがります。そこで、もしもスーパーでお菓子をねだられたら、根気強く『本当に必要なものなのか』『明日、明後日も欲しいものか』を子どもに尋ねてください。大変だとは思いますが、買う前に考えるという癖がつき、ムダ遣いをしない大人に育つ可能性があります」

 将来、堅実な大人に育ってもらうには、日々の積み重ねが大切なのだ。

 そして、子どもが中高生の場合は「親子で一緒に投資について学ぶ姿勢が最も重要」と、市川氏。

「中高生は投資に興味を持ちやすい年代なので、その芽を育てるのが親御さんの役割です。自分に投資の知識がないなら、お子さんと一緒に学ぶのがベスト。最近は、投資の勉強ができるツールも多く登場しています。金融庁が公開している『資産運用シミュレーション』は、月々の積立金額、想定利回り、積立期間を入力すると、資産運用によって得られる『最終積立金額』の合計が表示されるサービスです。たとえ少額でも、数十年単位で長期間積み立てれば、後にプラスになることが可視化され、早く投資を始めるメリットも理解しやすくなります」

 あくまでシミュレーションだが、長期投資の仕組みやメリットを手軽に学べるツールだ。

 そのほか、子ども用に未成年口座を開設し、お小遣いを元手にした株式投資に挑戦する方法もあるという。

市川雄一郎・グローバルファイナンシャルスクール校長<識者プロフィール>
市川雄一郎

投資教育家。Global Financial School校長。CFP/1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、金融機関の職員や顧客に対する講義や講演も行う。またラジオNIKKEI『投資のベースキャンプ』のパーソナリティー、TBSドラマ『トリリオンゲーム』の投資監修などメディアでも活躍。主な著書に『投資で利益を出している人たちが大事にしている45の教え』(日本経済新聞出版)、最新監修書籍『0からわかる!株超入門』(ソシム)がある。

「株式投資の単元未満株(ミニ株)ならば、1株から買えて、リスクも低くおすすめです。株の銘柄を選ぶときにも、好きなゲームメーカーやお菓子メーカーなど、子どもの視点を取り入れつつ、親も一緒に株価チャートを見ながら相談して決めましょう。企業は出資者から集めた資金をもとに事業に取り組み、業績が上がると『配当金』というお小遣いがもらえます。少額の投資でも、そうした株式投資の一連の流れを学ぶことができます」

 子どもたちは知識を柔軟に吸収するし、理解も早い。おそらく、親子で一緒に学び始めてもすぐに大人を追い抜いてしまうだろう。

「投資は、早く始めて長く続けるほどメリットが大きい資産形成の方法です。10代のうちに基本的な流れを知っておけば、社会に出てからすぐに本格的な投資をスタートできます」

 そして、市川氏は「一度投資を始めたら、諦めずに続けてほしい」と、アドバイスを送る。

「料理や車の運転と同様に、投資とは失敗や成功を繰り返して上達していくものです。投資の専門家でもあるファンドマネジャーも、過去に何度も痛い目を見て学び、次に生かしています。たとえ失敗をしても、投げ出さずに勉強を続けると、将来必ず役に立つ日が来るはずです」

 子どもだけでなく、日本に住む大人たちも“お金に対する価値観”を変える時が来ているのかもしれない。