専門性と多様性の両方を追求し駆使する
──イノベーティブな組織づくりに向けて、社員に求めるスキルなどはありますか。
石川 最近の若い人たちは特に社会貢献の意欲が強いと感じます。そうした人材が、他者と協業を進める中で、健全なダイバーシティ意識や共感力を身に付ければ、イノベーションを興す可能性は高まっていくと思います。一方で、外部とのコラボレーションが広がれば広がるほど、個人のスキルは拡張より深化を志向すべきだとも思っているんです。というのも、オープンコラボレーションで課題を解くとき、頼りになるのは個々のメンバーの専門性です。右手で専門スキルとなる技術を習得し、左手で共感力を身に付け社会課題の解き方を覚えていく──。その両方を追求し、駆使することによって価値創造につなげてほしいですね。
吉備 社会課題とされていることは、幾つもの問題が複雑に絡まったものばかりです。組織や立場を超えて解決策を考えていく「私たち」には、スキルも重要ですが、その中心には熱いパッションが不可欠だと思いますね。
石川 そう、イノベーションのスタートに必要なのは圧倒的にパッションなんです。だから私のミッションは第一にパッションを邪魔しないことだし、パッションをパッションに終わらせないこと。PYNTは、社会課題に対するみんなのパッションをビジネスにしていくという、ミッションに変換する装置だと思っています。
吉備 そのためにはPYNTが課題を集めて議論するだけではなく、アクションを起こす場にならないといけません。ここが社内外から英知を集める結節点になれば、アイデアが実装に至る糸口がたくさん見つかると思います。ゆくゆくはPYNTに集うさまざまなセクターの人やチームの集合体からプロジェクトが自然発生していくようになるのが理想です。
石川 私が都市計画の専門家だからかもしれませんが、イノベーション活動って「まちづくり」に近いですよね。さまざまな思いを持って参加するステークホルダーがいる中で、共有できる目的や最適な着地点を作るということは日建設計が本業ビジネスとしてやってきたことです。そこで培ってきた資産は、社会課題の解決にもっと還元できるものだと思っていますし、その媒介としてPYNTの活用の機会を広げていきたいと思っています。