建設工事が進む大阪・関西万博のメイン会場建設工事が進む大阪・関西万博のメイン会場 Photo:SANKEI

不評だった「インパク」から20年
万博はネット時代にどれだけ意味があるのか

 2025年の万博の開催地が大阪に決まった2018年11月、筆者は「この万博が成功する可能性は低いだろうな…。なぜ大阪で、また…?」と暗澹(あんたん)とした気持ちになったことを覚えています。その理由は、2000年12月31日から1年かけて開催された「インターネット博覧会」(通称インパク)において、当時勤めていたソフトバンクでインパクの担当をした経験を思い出したからです。

 インパクは当時、経済企画庁長官だった堺屋太一氏の提案に基づき、政府のミレニアム記念事業の一環でもある経済振興策として、110億円の予算を投じて実施されました。「すべての人がインターネットに親しむ」をコンセプトに、企業・個人や地方自治体がネット上に出展したパビリオンは507サイト、トップページのアクセス数は年間5億3300万回で、「一定の成果があった」とされています。

 しかし、開催期間が終了すると、多くのサイトは閉鎖され資産として残ったものはほとんどありませんでした。また、トップページのアクセス回数もハッキリ言って決して多くありません。例えば、2001年1月のYahoo!JAPAN全体のページビューは、1日当たり1億5000万PVでした。インパクのトップページのみと単純に比較はできないのですが、数値のおおよそのイメージは分かりますよね。

 実は、私はこのインパクの事務局から開催前、「パビリオンへのIT企業や個人の出展者が集まらないで困っている」と相談を受けていました。それは、「ソフトバンクならIT企業や個人を束ねて、万博らしい新しいテクノロジーを集めることができるのでは?」という期待からでした。

 そこで、外部企業や個人に詳しい社内の人物を複数ヒアリングしてみたのですが、「わざわざインパクに対応しなくても、すでに自社サイトに自社商品を掲出している」「新しいテクノロジーを活用した商品だからといって、インパクでやる必要がどれだけあるのかな」といった声ばかり…。ソフトバンクから無理やり取引先にお願いするのはかなり微妙だという話になってしまいました。

 それもそうでしょう。そもそもインターネットとは日本中、世界中に同時に低コストでいつでも自社商品を知ってもらえる空間です。物理的な場所や時間、煩わしいしがらみや制約にとらわれる必要はありません。インパクに参加するメリットはいったい何か。事務局担当者にこう話すと、その後、連絡は来なくなってしまったのでした。

 インパクの不評については、すでにさまざまな検証がなされているのでこれくらいにしておきましょう。突き詰めると企画側に、ネットに対する無理・無知・無駄があったと思います。

 そして、「万博はネット時代にどれだけ意味があるのか」という命題は、あれから20年以上たってさらに顕著になっています。スマートフォンが普及し、誰もが安価かつ手軽にネットから情報を入手できるようになっているからです。

 次ページでは、万国博覧会というイベントの意義を、その歴史を振り返りながら考えてみたいと思います。25年大阪万博の旗振り役でもあった堺屋氏のビジョンの矛盾や、最近SNS上で渦巻くある疑念についても紹介しましょう。