また、日本全体で人手不足は深刻化する一方だ。新卒採用に積極的な大企業の多くは東京に本社を置いている。雇用ニーズの高い東京は人を集めやすい状況にある。
これだけの需要があるエリアにおいて、供給は限定的である。都区部の賃貸住宅の新規着工戸数はここ数年約6万戸なので、需要過多になる。これに加えて、賃貸住宅の古いストックの滅失が一定量発生する。アパートなら30年、マンションなら50年で老朽化して市場価値を失い、解体するケースが多い。
世帯数予測は現実と乖離
需給はどんどん逼迫する
しかし、こうした需要過多の状況を予測している知識層は少ない。それは人口・世帯数予測に表れている。無料なので多くの人が利用している社会保障・人口問題研究所(以降、社人研)の世帯数予測は、2015年までの実績で2020年を予測しているが、東京都の世帯数が5年で536246増えたのに対して、予測は231462と30万以上乖離がある。この予測値では需給はひっ迫しないが、実績値ではその逆になる。
これだけずれるのは、世帯人員が予測よりも少なくなっていることによるところが大きい。実家を出て、一人暮らしを始める人が想定以上に多いのだ。社人研の予測では東京都の世帯数のピークは2030年となっているが、これは大幅に後ろ倒しになる可能性が高い。つまり、東京都に家が必要な世帯がまだまだ増え続けることになりそうなのだ。
それはすでに国勢調査の実績で示されている。2015年に20-24歳の人口に対する借家世帯主の割合は41.1%だったが、2020年には46.1%へと5%アップ、同25-29歳のそれは50.9%から59.8%へと8.9%も急増している。わずか5年でこれほど上がったことは、今までにない。20代の若者にとって、一人暮らししたいニーズが非常に強まっていることだけは確かだ。
しかし、この数字は実家が遠い地方から出てくる人の多さによるものなのかもしれないと思い、以前の居住地を調べてみた。都区部にやってくる人がどこから来るかは、住民基本台帳移動人口という公的データで分かる。他の年代と比較して圧倒的に移動人数が多い20代の約50%は、都区部をとりまく首都圏内の郊外から流入してきている。つまり、都下・神奈川県・埼玉県・千葉県の実家から出て、一人暮らしを始めているのだ。