政府が働き方改革に乗り出してから、多くの人に「働きすぎは良くない」という認識が一般的になった。
しかし、多少無理をしてでも頑張った経験が、人を成長させるのも真実だろう。
コンサル22年で得た知見を凝縮した書籍『頭のいい人が話す前に考えていること』の著者である安達裕哉氏は、「“月200時間の残業”をしていたが辛くなかった」と話し、こう付け加えた。「ただ少しでも条件が違っていたら病んでいたかもしれません」
本記事では『頭のいい人が話す前に考えていること』には入りきらなかった「病む職場」「成長する職場」の決定的な違いについて述べる。(構成/淡路勇介)

頭のいい人が話す前に考えていることPhoto: Adobe Stock

残業200時間働くとはこんな感じ

社会人のみんさんはどのようなスケジュールで1日を過ごしているだろうか。

コンサルティング会社に在籍していた時の私のスケジュールは主にこんな感じだった。

出社:7時30分
朝礼および本日の予定の打ち合わせ(チーム):~9時
客先(平均2時間×4件程度 個人か2名程度で動く):~18時
夕礼および勉強会(チーム):~20時
宿題事項および、翌日の準備(個人):~0時
事務処理、報告書のレビューなど(個人):~1時30分
退社:1時30分

今から10年以上も前のことなので、時代錯誤感も否めないが、上司の口癖は、「夜できることを昼にやるな。休日できることを平日にやるな」であった。

なので、平日の昼間は100%客先に充てる。
昼間の社内にいるコンサルタントは、ダメな奴なのである。
なぜならコンサルタントは、客先に行かない限り、売上が上がらないからだ。

よって、事務仕事は必ず夜。しかも、お客さんの仕事をすべて終えた後だ。
事務仕事の優先度は極限まで落として、残ったら休日にやるという具合だ。

食事もままならない

食事は仕事の合間。立ち食いソバを食べたり、カレーショップに入ったり、弁当を食べたりするのが日常だった。
食事のためだけにまとまった休憩を取ることなどあまりできなかった。
移動にタクシーを使っても良かったのがせめてもの救いかもしれない。休憩はクライアントからクライアントへの移動時間に車内で寝ることが多くあった。

ちなみに、列車は自腹で普通車のグリーン車をよく使っていた。
若いときには、15分も寝られれば、かなり回復するものだ。
また、会社の近くに住み、退社から15分で家に帰れるようにしていた。
この働き方で累計すると、月に残業が約170時間くらいになる。

しかし土日の出勤で、30時間の残業が生まれる。

というのは、土日にやっていたのは以下の4つが多かった。
・お客さん向けのセミナー
・社内の勉強会、商品開発会議
・合宿
・平日の積み残し

これらのために大体9時ごろに出社して、結局夕方まで仕事をしていたからだ。

なお、私の上司は「勉強会」と「合宿」をかなりの頻度で行っていたので、相当の土日がつぶれた。
平日の昼を100%客先で過ごしているため、社内でコンサルタント同士が顔を合わせられるまとまった時間を捻出するには、休日に勉強会や合宿をするしかないという事情がある。

こうして平日と休日合わせて、残業が200時間になるというわけである。

なぜ200時間残業がそうつらくなかったのか

さて現代では「働き方改革」ということも言われ、「過労死ライン」という言葉もある。月の残業が80時間あるいは100時間といった目安もあり、労災認定のひとつの基準にもなっている。

月200時間の残業など論外と思われることだろう。

しかしこれが、個人的にはそこまでつらくなかったのである。

自慢したいわけではない。

今、あの頃を振り返って思うのは、運がよかったということだ。

山ほど働いても病まずにいられた条件がたまたま揃っていた。

そして、間違いなく、あの頃の山ほど働いた経験が今の自分を作っていると確信できる。