AIのイメージ写真はイメージです Photo:PIXTA

AIをはじめとするデジタル技術が人間の知能を超える転換点「シンギュラリティ」。これまで絵空事に思えていたシンギュラリティが、年々現実味を帯びてきた。これから先、AIが本格的に活用されるようになれば、多くの人が仕事を失うことになりかねない。AI時代を生き抜くために必要な「専門性」について、現役電通マンの国分峰樹氏が解説する。本稿は、国分峰樹『替えがきかない人材になるための専門性の身につけ方』(フォレスト出版)の一部を抜粋・編集したものです。

3億人の仕事が
AIに奪われる未来

 自分の専門性ということを考えるにあたって、特に意識しなければならなくなっているのが、AIの進化です。AIというのは「人工知能」(Artificial Intelligence)ですので、人工的な頭脳が生み出す知識についても、「新たな知識」を創造する装置として人間の競争相手になります。

 ChatGPTに聞けばわかることを、対価を払って専門家に聞こうという人はいなくなるため、専門性として認められるのはどういった知識なのかということを考えなければなりません。ChatGPTのようなAIシステムは3億人の仕事を奪う、というゴールドマン・サックスの予測もあります(1*)。

 AI研究者の松尾豊さんは、今までは「AIに仕事を奪われる」という意見に対して「いや奪われないよ」という考えだったのが、2023年に入ってから「いやいや今度は本当に奪われますよ」に変わったと語っています(2*)。

 ChatGPTは、インターネット上に存在している知識を学習してすぐに答えを出してきますので、ビジネスパーソンにとってはかなりの強敵です。間違える頻度も、人間よりずっと少ないかもしれません。ChatGPTは、2022年11月に公開されて間もないですが、スタンフォード大学の期末試験で多くの学生が使用したり(3*)、トランプ大統領やイーロン・マスクを輩出したペンシルバニア大学の期末試験でもいい成績をとれるレベルになっています(4*)。日本の医師国家試験でも、正答率が55%(医学部の六年生レベル)だったという記事もあります(5*)。

 AIは新しく登場する専門分野にも即座に対応することができますので、ビジネスパーソンがプロとして求められる専門性のレベルもスピードも、一気に水準が上がっていくことが想定されます。

 今から3年後、5年後のビジネスにおいて、ビジネスパーソンの最大のライバルとなるのは、競合する他社や他業種から入ってくる企業のビジネスパーソン以上に、おそらくAIだと考えられます。そして、ChatGPTの登場によってパンドラの箱が開けられた感がかなり漂っていますので、こうなってくると自分が想定しているよりはるかに速い進化が、あっという間に目の前に迫ってくると心づもりしておくことが重要です。

 AIの進化がどれぐらいのスピード感で、どこまでレベルを上げていくのかをイメージするのにいい事例として、囲碁におけるAIと人間の戦いがあります。このストーリーを知っておくと、人工知能と自分の頭脳を同じ土俵で戦わせては絶対にダメだということがよくわかります。

「実装フェーズ」に
入りつつあるAI

 では、AIにできる仕事とAIにはできない仕事を、どのように見極めればよいのでしょうか。

 多くの人は、自分がやっている仕事はAIに取って代わられるはずはない、もしくは、そうなるとしてもだいぶ先のことだろう、と考えたくなると思います。こういった技術革新というのは、ガートナー社が提唱する「ハイプ・サイクル(6*)」で示されているように、テクノロジーは最初に登場したときには過剰な期待が寄せられてブームになりますが、そのあと幻滅期に入って急に熱が冷めていくパターンが多いとされています(図1)。

ガードナー社の「ハイプ・サイクル」(図1)ガードナー社の「ハイプ・サイクル」(図1) 図:本書より 拡大画像表示

 今でいうとメタバースがちょうど期待のピークで、IoT(モノのインターネット)は関心が失われた底のあたりにいるといった具合です。AIに関しては、最初のブームが1950年代に始まって、現在は第4次ブームといわれていますので、過熱と幻滅を経て技術の成熟度が増しており、いよいよ本格的な実用フェーズに入っていく可能性が高いと考えられます。