自己コントロール力の発達には幼児期が重要
自己コントロール力が高くないと社会適応に困難をきたすことは容易に想像できる。たとえば、自分の感情をうまくコントロールできなければ、人間関係が安定せず、信頼関係も築きにくいし、トラブルが絶えないといったことにもなりがちだ。また、自分の気持ちをうまくコントロールできなければ、勉強に限らずスポーツでも芸術でも、目標に向けて忍耐強く努力を続けることができず、すぐに誘惑に負けてさぼったり、思い通りにならないとすぐに落ち込んでやる気をなくしたりといったことにもなりがちである。
ここから言えるのは、子どもの頃、とくに幼児期において、自己コントロール力の発達を促進するような働きかけをすることが非常に大切だということである。親など周囲の人たちからそのような働きかけをしてもらえないと、自己コントロール力が未熟なままということもあり得る。目の前の子どもが喜ぶ笑顔を見たいなどといって将来のことを考えずに甘やかす親だと、そのようなことが起こりがちだ。その場合は、自分自身で自己コントロール力を意識して鍛える必要があるだろう。
主に成人を対象とした調査研究により、自己コントロール力は年齢の上昇に伴って高くなっていくことが示されている。これは自己コントロール力が成人後も発達していくことを示唆するものであり、幼児期・児童期にうまく発達していなくても、中高生や大学生になってからでも十分鍛えることができることを意味する。
モチベーションを高く維持できるかどうかで成果が変わる
学校での学習活動にやる気をもって取り組めるかどうかには、非認知能力が大いに関係しているが、とくに重要となるのが、モチベーションを高める能力である。勉強に限らずスポーツや音楽などの趣味的な活動でも、モチベーションを高めて取り組むことが大切であることは、だれもが頭ではわかっているはずだ。
それはわかっていても、なかなかモチベーションが高まらないこともあるだろう。結局のところ、モチベーションというのは気持ちの問題である。いくら頭でわかっていても気持ちがついていかなければモチベーションは高まらない。このようにモチベーションには理屈よりも気持ちの面が大きいことを考えると、気持ちのコントロールがいかに重要かがわかるだろう。
もちろん日頃からモチベーションを高く維持しながら勉強に取り組むことができるかどうかによっても、学力は大きく左右される。だらだらするよりもやる気をもって取り組む方が有効な学習になるのは当然である。
でも、非認知能力の一つである自分の気持ちをコントロールする力が、いきなり身につくわけではない。そこで問われるのがメタ認知能力である。ここの文脈で言えば、モチベーションを高める方法を知っているかどうかである。自分の心の中にやる気を燃やすコツを心得ているかどうかということである。メタ認知能力については次回で詳しくみていく。