自己コントロール力の向上が学業成績につながっていく
非認知能力の中核をなすのは自己コントロール力である。必要に応じて自分の心の状態を適切にコントロールすることは、勉強や仕事に取り組む際にも、人間関係上でも、必要不可欠と言ってよい。
子ども時代の自己コントロール力に関する多くの先行研究の結果を検討したロブソンたちは、子どもの頃の自己コントロール力によって、その後の学業成績や人間関係の良好さ、問題行動や抑うつなどの病的傾向、失業などを予測できることを確認している。中学生を対象とした追跡調査でも、自己コントロール力の向上がその後の学業成績につながっていくことが確認されている。
このように学業も含めて将来社会的にうまくやっていけるかどうかと関係しているとみなされる自己コントロール力だが、これを測定する心理尺度がタングニイたちによって開発されており、その短縮版の日本語訳も心理学者の野崎優樹たちによって作成されている。以下にその自己コントロール尺度短縮版の日本語訳を示すので、自己コントロール力とは具体的にどんな能力なのかをイメージしてほしい。
わかりやすいように、まず前半に自己コントロール力の高い人があてはまる項目を並べ、後半に自己コントロール力の低い人があてはまる項目を並べてみる。
・自分にとってよくない誘いは、断る
・誘惑に負けない
・自分に厳しい人だと言われる
・先のことを考えて、計画的に行動する
自己コントロール力の低い人があてはまる項目
・悪いクセをやめられない
・だらけてしまう
・場にそぐわないことを言ってしまう
・自分にとってよくないことでも、楽しければやってしまう
・もっと自制心があればよいのにと思う
・集中力がない
・よくないことと知りつつ、やめられない時がある
・他にどういう方法があるか、よく考えずに行動してしまう
・趣味や娯楽のせいで、やるべきことがそっちのけになることがある
前半の項目の多くが自分にあてはまり、後半の項目の多くが自分にあてはまらないという人は、自己コントロール力の高い人ということになる。反対に、前半の項目の多くが自分にあてはまらず、後半の項目の多くが自分にあてはまるという人は、自己コントロール力の低い人ということになる。
自分に厳しく、だらけることがなく、自制心があり、誘惑に負けず、集中力があり、やるべきことをさぼることなく、先のことを考えて計画的に行動することができれば、必要な勉強はしっかりこなし、ここぞというときに頑張ることができるため、学力を高め、その結果として良い成績を取れるのは目に見えている。
反対に、自分に甘く、すぐにだらけてしまい、自制心が乏しく、つい誘惑に負けてしまい、集中力がなく、やるべきこともついさぼってしまい、計画してもなかなかその通りにできない場合は、必要な勉強も疎かになりがちで、学力を高めることができず、良い成績を取ることは期待できない。
こうしてみると、勉強ができるようになるには、自己コントロール力を高めることがいかに大切かがわかるだろう。