ビジネスの本質は野球ではない
“サッカー”だ!
前提として入山氏は、今のビジネスに求められる組織が「野球ではなくサッカー型」に近づいていることを強調する。
というのも、野球は「監督を頂点にした指示体系」の下でマネジメントが行われる。
例えば攻撃時は、打者がバッターボックスに立った際や出塁したときに「次は送りバントだ」「ホームランを狙え」「盗塁しろ」などと、監督が各プレーヤーに細かく指示を出す。一球ごとにサインを変える場面もある。監督からの指示をコーチが代わりに伝えることもある。
これはいわば、トップダウン型の命令系統だ。社長から役員へ、役員から部長へ、部長から課長へ…と指示を伝えていく。旧来型の日本企業にありがちな、上意下達のリーダーシップといえよう。
ただしサッカーは、監督からの指示が重要であることに変わりはないが、野球ほどワンプレーごとに細かく指示を出すわけではない。選手は「チームの約束事」の範囲内であれば、自分の意思で広いフィールドを縦横無尽かつ自由自在に動くことができる。
そして、チーム全体がうまく機能するよう、個々人がリーダーシップを持って行動することが比較的許されている。
相手に攻め込まれたときやセットプレーの際は、FWの面々が臨機応変にゴール前まで下がることもある。それどころか、FWが味方のDFに指示や叱咤激励をすることもある。完全な分業体制ではなく、「チームの勝利」という目的のために、別ポジションのメンバーに声を掛けるのも当たり前なのである。
一方、野球の世界では、野手が自己判断で大きく守備位置を変更したり、野手が投手に配球のアドバイスをしたり、打者が勝手にバントをしたり…といったシーンは見られない。プレーヤー同士が話し合い、自主的に打順を変えることもあり得ない。監督の指示なしにそんなことをすれば、激怒されるだろう。