:品川女子学院では、担任に限らず、手を挙げた教員がメンターを務めます。さらに、生徒たちの保護者がアドバイザーを務めています。企業経営者、投資家、外資のコンサルティングファームのパートナーといったさまざまな職種の方が参加します。

それゆえに「配当金をもっと厚く」「来校するお客様が手に取りやすい価格に」といった考えがぶつかりあうこともありますが、それこそがリアルな社会勉強だと思います。そして、コンフリクトが起こるたび、「なぜ起業家教育をしているのか」「その会社(生徒たちのチーム)の理念はなにか」と、「何のために」に立ち返るようにしています。

教育機関で起業家教育をうまく展開するヒント

馬田:2022年には政府がスタートアップ支援の司令塔となる「スタートアップ担当大臣」を新設し、教育機関で起業家教育を行う流れが強まっています。漆さんとしては、どこに気をつけて展開すべきだと思いますか。

:「起業家教育の目的を定義する」「リスク管理」「教員の教育」の3つです。

私の話から察していただいているかと思いますが、学校で起業家教育に挑むと多種多様なトラブルが発生します。私も初年度は大失敗をして生徒に申し訳なくて、泣きました。決して楽ではないからこそ「何のためにやるのか」を定義し、目的と理念にいつでも立ち戻れるようにしておくことが大事なんです。

品川女子学院は女性に参政権がなかった1925年に、荏原女子技芸伝習所という名前で開校。その後、女性の社会進出を目的に97年間、教育を続けてきました。でも、(女性にとって)高い障壁は未だにたくさんあります。

起業家教育は、女性たちが自立し、意思決定の場に入るチャンスになり、ジェンダーギャップ解消の一手になると私は確信しています。人口減少社会の日本の中で、いわば含み資産と言える女性の力を活かすため、品川女子学院は起業家教育を行っています。それくらい強い意志がないと、続けられるものではありませんでした。

馬田:確かに、学校側に相当な意気込みがないとすぐにめげてしまいそうです。そうならないためにも、起業家教育を行う前に「学校としてなぜ起業家教育を取り入れるのか」を明確にしたほうがいいんですね。

:続いて「リスク管理」。学校外の方々とつながると、その分、社会のリスクも校内へ入ってきます。それを乗り越えて、社会実装できそうなアイデアが出たとき、受験とのぶつかりも起きます。また、事業化を目指してアイデアコンテストなどで発表している間に、大人に取られてしまうという知財保護の問題もあります。