1つ目の業務によるジョブクラフティングの例で私が好きなエピソードは、現・楽天大学学長の仲山さん(仲山進也氏)が約20年前に楽天大学を創設した頃の話です。楽天大学は楽天市場に出店する事業者に向けて、マーケティングや店舗運営、経営に関する知識を提供するサービスです。普通に考えると、講師が教える研修スタイルのサービスを想像するところですが、当時の仲山さんは人前で話すのが大変苦手だったといいます。講師として研修をしなければならなくなった仲山さんは「講師が話さなくてもいい研修」を必死で考案し、それが独自の進化と成長を遂げた結果、現在の「アクティビティ中心の講座」や「店舗同士が学び会う場」などの楽天大学の個性となったのだそうです。

2つ目の関係性によるクラフティングは、もともと決まった人間関係で仕事が進んでいるところへ、違うところからの関係性を持ち込む方法です。たとえばマーケティングを担当している人はマーケティングチームに所属し、社外でもマーケティングのプロからの意見を聞くのが通常の仕事の進め方でしょう。それをガラッと変えて、高校時代の友達に意見を求めたり、専門外だけれども仲のいい人と話したりしているうちにヒントが得られたというようなケースが、関係性によるクラフティングにあたります。

3つ目の認知によるクラフティングは、意味がないと思っていた仕事を「よく考えればこの仕事は会社のミッションにすごくつながっている」と自分なりに道筋を見つけて、急に“やる気スイッチ”が入るような場合が挙げられます。ここでつながるのは「会社のミッション」などでなくともよく、たとえば「同僚にありがとうと言われるのがうれしい」という人なら「この仕事をありがとうと言われる仕事にしよう」といった気づきでもよいのです。

このように仕事をアレンジすることから内発的動機が育まれ、仕事を自律的に進めることにつながります。特にスタートアップでは、業務や関係性の領域で「個人の勝手さ」や「ちょっとしたワガママ」を発揮することは、結果としてイノベーションにつながる可能性が大きいと感じます。

記事の前半でもお伝えしたように、傾聴による他者からのサポートがあると、仕事の話だけをしていると忘れてしまうような、自分が本当に楽しいと感じること、好きなことを思い出すことができます。それが思い出せると、その「一さじ」を入れて仕事を主体的に自分らしく進めることにつながります。そのためには、フラットに話を聞いてもらえる時間を持つことが大切です。