2022年に注目した・盛り上がったと感じる領域、テーマ、テクノロジー、プロダクトなどを教えてください。

・サステナビリティ
CO2削減など世界的な潮流に企業活動が変化を迫られる中で、スタートアップ業界でも、その流れを捉えようとする動きがたくさん見られました。

・Web3
インターネットの構造改革を促す取り組みとして注目が集まりました。クリプト価格の大幅下落でやや落ち着いた印象も受けますが、各社事業に集中できる環境になり、今後に期待です。

・法人クレジットカード
Upsiderを筆頭に、法人クレジットカード市場が急速に立ち上がりました。今後さらなる競争が生まれて、成長発展していく分野だと確信しています。

・FTX
スタートアップのガバナンスのあり方が問われました。成長への挑戦は多いに励ましつつも、サービス特性を踏まえた適切な監督・牽制機能は継続成長のために不可欠です。

2023年のスタートアップシーンや投資環境はどのように変化すると予想しますか。

2つのテーマが同時に発生すると思います。
・スタートアップの優勝劣敗と再編
・起業テーマの多角化と野心的探索

・スタートアップの優勝劣敗と再編
株式市場に楽観的なムードが漂うときは、トレンドに身を寄せて調達を行い、その潤沢な資金でトライ&エラーを繰り返して、事業成長させながら帳尻を合わせていくような経営も可能だったのではないでしょうか。

私たち投資家は起業家の語る未来に合意し、そこに寄り添いながら共にその未来を実現していくという点において、そのようなやり方は間違いではないと思います。一方で、リスクマネーが投資の選別を厳しくしている現在においては、トレンドに身を寄せるだけでなく、強い説得性と説明能力が求められるようになっています。

そうした条件が加わった中で、スタートアップごとの資金調達に大きな差が生まれ、優勝劣敗が明確になっていく1年になると思います。調達規模に大きな開きが発生することで、大が小を飲むようなM&Aや、複数社で経営統合して大型化しようという試みなどが行われると思います。

時として、起業家や投資家にとって瞬間的な痛みを伴う経営判断が求められるかもしれませんが、中長期でみるとスタートアップ・エコシステムがもう一歩前進することが期待できます。

・起業テーマの多角化と野心的探索
SaaSは個々の企業を考えるなら成長期の真っ最中ですが、株式市場ではSaaS銘柄の熱狂はやや冷静さを取り戻して、成熟期への移行段階に入ったような印象も受けます。

そうした変化を受けて、「What’s next?」という問いが起業家・投資家の間で生まれているような気がします。そのひとつが今年はWeb3だったのかもしれませんが、より一層多様な分野での起業が勃興していくでしょう。