「上司も部下も、社会人全員が一度は読むべき本」「被害者や加害者にはならないためにもできるだけ多くの人に読んでほしい」と話題沸騰中の本がある。『それ、パワハラですよ?』(著者・梅澤康二/マンガ・若林杏樹)だ。自分はパワハラしない、されないから関係ない、と思っていても、不意打ち的にパワハラに巻き込まれることがある。自分の身を守るためにもぜひ読んでおきたい1冊。今回は特別に本書より一部抜粋・再編集して内容を紹介する。
部下の個人SNSアカウントに「友だち申請」「いいね」。何か問題になる?
30代女性。個人でXやインスタのアカウントを持っている。自分がSNSで投稿しているのが上司や先輩にバレて、友だち申請された。業務とは関係のない個人のSNSなので、見られること自体が嫌だ。
【解説】
SNSの個人アカウントはそれ自体がプライベートなものである上、そこに掲載される情報も基本的にプライベートな事柄です。
職場の上司や先輩が会社に関係のない、部下の個人的なSNSアカウントにアクセスすることは、通常、業務との関連性も業務上の必要性もないと思われます。
しかしながら、一定の人間関係がある相手に対して、SNSアカウント上で友だち申請したり、投稿内容に「いいね」をしたりすること自体は、常識に照らし合わせても、それほどおかしな行為とは思われません。
また、上司が友だち申請や「いいね」を押すこと自体は、職場での関係性をプライベートでも強制することに直結するものでもありません。
そのため、上司や先輩から個人のSNSアカウントに友だち申請が来たとか、SNSの投稿に「いいね」をされたというだけで、ただちにパワハラにはならないと考えます。
パワハラになりうる3つのパターン
しかし、しつこく友だち申請を承認するように求めたり、「いいね」する頻度が過剰だったりする場合は話が別です。
●友だち申請を放置していたところ、上司から「なぜ承認しないのか」と問い詰められ、承認するよう強く求められた
●友だち申請を拒否したところ、「なぜ拒否するのか」と叱責された
●常に自分を監視しているかのような投稿が繰り返された
このような場合は、人間関係を構築するという正当な目的の範疇を超えるものとして、パワハラと評価される余地は十分にあると考えます。
※『それ、パワハラですよ?』では、ハラスメントかどうかがわかりにくい「グレーゾーン事例」を多数紹介。部下も管理職も「ハラスメント問題」から身を守るために読んでおきたい1冊。
弁護士法人プラム綜合法律事務所代表、弁護士(第二東京弁護士会 会員)
2006年司法試験(旧試験)合格、2007年東京大学法学部卒業、2008年最高裁判所司法研修所修了、2008年アンダーソン・毛利・友常法律事務所入所、2014年同事務所退所、同年プラム綜合法律事務所設立。主な業務分野は、労務全般の対応(労働事件、労使トラブル、組合対応、規程の作成・整備、各種セミナーの実施、その他企業内の労務リスクの分析と検討)、紛争等の対応(訴訟・労働審判・民事調停等の法的手続及びクレーム・協議、交渉等の非法的手続)、その他企業法務全般の相談など。著書に『それ、パワハラですよ?』(ダイヤモンド社)、『ハラスメントの正しい知識と対応』(ビジネス教育出版社)がある。