足元では、PEファンドなどの海外投資家が日本のスタートアップ市場に対する投資を減らしているため、日本でもレイタ―ステージを中心に資金が集まりにくい状況になっています。アーリーステージでも時価総額が前回ラウンドの据え置きやダウンラウンドも出始めていて、スタートアップ投資にも徐々に影響が出始めている印象です。
IPO市場をみても、第3四半期までのグローバルでの調達金額は前年比で56%減少しており、特にNYSE、NASDAQ、HKEXなどの株式市場でのIPO調達金額が大きく減少しています。国内のIPO市場においても前年比でIPO件数は約24%、ディールサイズは約60%と大きく減少するなど、影響は大きくなっています。
2022年は景気後退懸念がある中でも、グローバル全体での脱炭素化の流れから、Climate Techへの注目は高かったと考えます。また、新型コロナウイルス感染拡大から感染症への治療薬に対するニーズとともに、アンメットメディカルニーズとしてがんや糖尿病などの慢性疾患への治療薬に対するニーズも高いです。
これまでも、不況下では既存ビジネスをディスラプトする新たなビジネスが生まれてきました。グローバル・ブレインとしても難しい投資環境の中で、ピンチをチャンスと捉え、次世代のビジネスを創造していく新たなスタートアップに投資していきたいと考えています。
2022年に注目した・盛り上がったと感じる領域、テーマ、テクノロジー、プロダクトなどを教えてください。
・Climate Tech
グローバル全体でスタートアップ投資金額が減少する中、Climate Techは2022年第1〜3四半期で前年比11.9%と上昇しています。グローバルでの脱炭素化の流れや、ロシア・ウクライナ危機による原油高により、原油代替エネルギーが再注目されているためだと考えます。2022年はサーキュラーエコノミーの文脈で、投資を積極的に実行しています。
・Life Science
グローバル市場では2021年と比較すると減少しているものの、投資金額、件数は2022年に次いで過去2番目に大きくなる見込みです。Life Scienceはアーリーステージを中心に盛況であり、引き続き当社の投資ターゲットです。新型コロナウイルスの影響で感染症に対する治療薬へのニーズはもちろん、人口増加や高齢化等により増加している非感染性疾患(Non-Communicable Diseases)の治療薬へのニーズもますます高くなっています。
・Food Tech
Food Techも2022年に大きく注目された領域です。当社の投資先であるベースフードが2022年11月15日に東証グロース市場に上場しました。新型コロナウイルスの影響で家庭での食事の機会が増加したこともあり、完全栄養食かつD2Cモデルで販売していた同社のベースブレッドが大きな注目を集めました。感染症が拡大する中で、健康への関心が高まったのも要因と考えられます。