たとえば店舗の場所に関する電話であれば、地図が載っているURLや具体的な道順を説明したテキストをSMSで送る。よく聞かれる質問についてはあらかじめ音声ガイダンスを用意しておくことで、スムーズに対応する──。

このように「必ずしも人の対応が必要ではない内容」を自動化することで、ユーザーは電話対応の時間を減らし、接客や重要な業務により多くの時間を使えるようになる。

利用料金は​​月額3300円のシステム利用料に、550円の電話番号維持代や通話代などが加算される仕組みだ。

冒頭でも触れた通り2020年11月のローンチから約2年半で導入企業数を広げており、2022年7月の時点でARR(年間経常収益)は1億円を突破。2022年12月時点でのMRR(月次経常収益)は昨年比で6倍に成長している。

もともとIVRyは中小企業やスモールビジネス向けに開発された。電話自動応答システム(IVR)を開発会社などに依頼して作ると、数百万円から数千万円の資金が必要になることもある。多くの中業企業やスモールビジネスでは利用が難しいため、そのようなユーザーでも手軽に使える仕組みを目指した。

IVRy代表取締役CEOの奥西亮賀氏によると、ユーザーの中には地方の飲食店やクリニックを始め少人数で運営している企業も多く「オーナーが電話対応を兼任している」場合も珍しくない。IVRyであれば本当に重要な電話だけを人力で対応すれば済むので、その点が重宝されるのだという。

このような課題は、人手不足や人件費の高騰などで現場のDXのニーズが高まっている大手企業においても同様だ。中には東横インやなの花薬局など100店舗以上で活用される例も出てきている。

実際に複数店舗でIVRyを活用するある飲食店では、平均で50%以上の電話対応を自動化。1回あたりの通話時間を3分で換算した場合、1カ月あたりで30時間以上の電話業務の削減を実現した店舗も生まれた。

また従来は対応できていなかった“営業時間外の電話”にSMSなどを用いて自動で対応することで、「(売上の)機会損失を防ぐ」ことにつなげている企業もある。

「チェーン店などであれば、今まで取れていなかった電話のデータを活用できるようになるという側面もあります。例えばあるホテルでは平日の午前中に電話が集中していて、電話を取れていないケースがありました。調べてみると、その時間帯には(ホテル内の)レストランのランチの予約の電話が多く、機会損失が発生している可能性があることがわかったんです。電話のデータを細かく分析することで売上拡大のチャンスや、オペレーションのエラーをいち早く発見できることもある。複数店舗を展開する顧客にはその点にも価値を感じていただけています」(奥西氏)