ゼルダBotWは、過去の開発者インタビューで「フィールドのサイズは実際の京都市のマップと同等」と回答されていることから、約827.8平方キロメートルの面積(参考:東京都23区部の面積は622平方キロメートル)があると推察できる。プレーヤーは、この広大な“箱庭”の中に放り込まれた主人公リンクを動かし、さまざまな体験ができるのが最大の特徴だ。筆者にとってその感覚は、かつて水陸両用のラジコンカーを公園の池に持ち込んで遊んだ感覚に近い。
馬にまたがって大地を駆け抜け、ロッククライミングのように切り立った崖を登り、空中を滑空する。泳いで渡りきれないような大きな湖は、イカダを水に浮かべて風力を与えて渡る──リンクは自然の中に多数用意された仕掛けを使って、さまざまに動き回る。実際の公園とは違ってフィールドを1人で独占できるし、ラジコンと違って操作ミスにより高所から落下しても壊れる心配もないし、バッテリー切れによる中断もない(操作ミスでライフが尽きればセーブ地点まで戻ることになるが)。
そんなフィールドをくまなく歩き回りたいと思わせるために用意された、謎解きの「ほこら」。プレーヤーは魔物とのバトルに備えてリンクの体力を増やしたくなるため、1つでも多くのほこらをクリアし、体力の源であるハートの数を増やしていく。この要素が、広大なフィールドを探索したくなるモチベーションになる。しかもほこらの謎を解くことも、魔物を倒すこともゲームの必須事項ではない。プレーヤーに提示されるのは、まさに「自由」そのものと言える。
自分だけが独占できる広大な空間を提供され、「冒険でも、散歩でも、どうぞ、ご自由に遊んで下さい。もちろんゲームとして戦闘やストーリーを楽しむこともできるので、なかなか飽きませんよ」と言われているかのようなゲーム。それがゼルダBotWだったのだ。
「もしかして、コレもできる?」ができる世界
ゼルダBotWの「すごさ」は、これだけに留まらない。ゲームという仮想空間の中に、いくつも再現された「現実世界と似た仕組み」も、その面白さを加速させている。
たとえば、時間経過。現実世界の1秒はゲーム内の1分に相当し、24分で1日が経過する。ゲーム内の登場キャラクターは昼間には仕事場で作業をし、夜になると自宅で眠る。特定の時間になると、墓地へ祈りに行くキャラもいる。こういった時間の概念が導入されたゲームはこれまでにもあったが、ゼルダBotWでは魔物にも生活サイクルを持たせている。夜になると武器を武器庫に置き、屋内で就寝する。どうしても倒せない魔物がいたときは、夜中に武器庫から武器を奪い取った上で、寝込みを襲うといった攻略法もある。