そこでまずは木材を1本用意し、そこに扇風機を接着する。急造のイカダを水に浮かべてみたら、扇風機の重量により木材がクルリと回転してしまい、扇風機は水中へ沈んでしまった。そこで木材を1本増やし、2本の木材を横に接着。これで回転はしなくなったが、今度は扇風機を取り付けていた位置が中央ではなかったため、真っ直ぐ進んでくれない。ではどう解決するのか? 扇風機の取り付け位置を2本の木材の中央へ移動させるのも1つの正解だが、扇風機をもう1つ用意して、左右に傾かない「ツインエンジン」にしても構わない。
かつてラジコンやミニ四駆などに触れたユーザーであればなおさら、自由な「組み立て」によるゲーム攻略に高揚感を覚えるのではないだろうか。筆者は子供時代にミニ四駆を組み立てていて、「モーターの数を2個、4個と増やしていったら、もっと速くなるか」とか、「ボディを前後に延長したら車体が跳ねずに安定するのではないか」と考えたことを思い出した。ほかにも「ここで下から支えてくれる道具があれば、高い位置にある宝箱が取れるのにな」というような仕掛けなどが提示される。そんな仕掛けをクリアするための道具を、その場にある材料を接着して自ら作り出す。これがゼルダTotKで追加された、最大の新要素だ。
別に格好いい自動車やイカダを作る必要はない。ゲーム内で提示された仕掛けをクリアできる機能を持つ道具さえ作れればそれでいい。でも、せっかく作るのなら……と、パーツの接着位置や配置などにこだわり始めると、それだけで数時間が経過していたなんていうことも、このゲームにおいては珍しい話ではない。
この感覚は、レゴのようなブロック玩具で何かを作っている感覚にすら似ている。最大の違いは、現実世界とは異なり、そのブロックが豊富に用意されていることだ。組み立てられる道具や乗り物の幅はかなり広い。また自ら作成した道具を用いて仕掛けをクリアした時の達成感は計り知れない。
ゼルダTotKの発売から1週間。ウルトラハンドの機能を使って独創性の高いさまざまな道具を作り出し、動画をSNSで公開しているユーザーも多数見かける。それらの多くは実用性よりもビジュアルインパクトを重視した大喜利のようなものばかりだが、それがまたファンの心に響き、自分も面白いものを作りたい、このブームに参加したい、という気持ちを生む。SNSにおけるポジティブな共感やバズが生まれるという意味でも、ゼルダTotKは最上級の成功例だと言える。