「レイアウトやマシンによっても、利用者層は大きく変わってくる。それがフィットネス業界の面白さの1つだと思います。この業界ではどこかが全ての領域で勝つのではなく、細かいセグメントごとに棲み分けが進んでいます。(LifeFitでは)事業を始めた当初はターゲット層がもう少しぼやっとしていて、広い層の方に向けて設計していた部分がありました。この1年で『成果を重視する人』という軸が明確に定まり、そのような方々に使ってもらえるジムになってきています」(加藤氏)

店舗内には複数のマシンが設置されている
 

加藤氏が棲み分けが進んでいると話すように、既存のジムからLifeFitに乗り換えたユーザーは全体の2割程度とそれほど多くはない。残りの8割は過去にジムを試したものの続かなかった人や、運動に興味はあれどジムに通ったことがなかった人だ。

既存のジムでは価格が高かったり、入会や退会の作業が面倒で「始めづらく、やめづらい」設計になっていたりと何らかの課題が存在している。その課題を解消していくことで、新たな市場やニーズを開拓できる余地があるというのが加藤氏の見立てだ。

LifeFitではジムの開設と合わせて、ユーザー向けのアプリや管理者用のバックエンドのシステムを全て自社で開発。ユーザーの手続きの手間を省くとともに、無人型のジムとして人件費を抑えて運営できる仕組みを作ることで、低価格を実現した。

また定額利用だけでなく、都度利用できるプラン(現時点では1回550円で単発利用が可能)を用意することによって、気軽に運動を始めやすい環境も整えている。

ユーザー向けのアプリのイメージ
ユーザー向けのアプリのイメージ。入会・退会手続きや施設へのチェックイン、近隣の店舗の検索などができる

飲食店のオーナーがフィットジムのオーナーに転身

内製のITシステムなどを駆使して運営の業務負荷を減らしたことは、フランチャイズ店舗のオーナーを集める上でもプラスに働いている。現在加盟しているオーナーの半数近くは、飲食店やコインランドリーなど「他業種のビジネスを展開していた事業者」だという。

「コロナ禍で既存事業の収益が落ちたことなどを1つのきっかけに、新たにフィットネスジムの運営に挑戦したいという方が増えています。割合としては新しく物件を借りて店舗を構えるケースが多いものの、2割程度はコインランドリーや飲食店など、既存の店舗をフィットネスジムに作り替えて運営されています」(加藤氏)

フィットネス業界の中でも直営型か、フランチャイズ型かは企業ごとにアプローチが異なる。FiTとしては「フィットネスに特化したIT企業として拡大する」戦略のため、自社ではソフトウェアやビジネスモデルへの投資に注力する方針。地場に精通したオーナーと協業しながら、フランチャイズ型で事業の拡大を目指す。