Wellではチャットツールにbotを入れてテキストをクロールし、解析。見える化したデータのダッシュボードを管理職向けに提供する。

「リモートワークの普及で、従業員の状況を、管理職も人事も把握しづらくなりました。(管理職も人事も)不安ですし、従業員自身も、どのように働けば良いのか戸惑っている状況です。Wellがあることで、例えば働き過ぎで鬱になってしまうケースを早めに探知し、解決していくことができます」

Boulder代表取締役の牟田吉昌氏は取材に対してそう話す。一例として、「投稿のDM(ダイレクトメッセージ)比率の増加」や「働き方のバイオリズムの変化」は従業員がストレスを抱えており、離職や休職に繋がりかねない危険な兆候だ、といったことがSlackやTeamsの利用傾向から読み解けると同氏は言う。中でも筆者が注目したのは、「ありがとう」と多く投稿する従業員はストレス度が高い可能性がある、という解析結果だ。牟田氏いわく、「ありがとう」と多く投稿する従業員は「評価を気にしやすい、もしくは人に気を使っている人が多く、ストレスがたまりやすい傾向にある」という。

Wellではそのような「黄色信号」を早期に察知し、該当従業員にサーベイを送信することでより詳しい状況把握を行い、人事担当者に解決策をレコメンドする。SlackやTeamsから得られる客観データ、そしてサーベイから得られる主観データを用いて、従業員のメンタルケアに繋げていくのだ。

コロナ禍で従業員のメンタルケアが“喫緊の問題”に

牟田氏が言うように、仕事のリモート化により従業員のストレスは増え、従業員のメンタルケアは多くの企業にとって課題となっているようだ。これを明らかにした調査があるので紹介したい。

一橋大学イノベーション研究センターが5月に公表した「新型コロナウィルス感染症への組織対応に関する緊急調査:第一報」によると、調査に協力した約半数の企業が「従業員への意思伝達が難しくなった」、「従業員同士の意思疎通が難しくなった」、または「部門間の連携が難しくなった」と回答した。

また、仕事上のストレスが増えたと約60%の企業が回答。一方で現場でのミスやトラブルが増加したと回答する企業は約10%に留まっている。同調査では「従業員間のコミュニケーションとメンタルケアが喫緊の問題」と示唆している。

これはテキストでのコミュニケーションが増えたことにより、対面コミュニケーションを通じて行っていた「意思疎通」や「メンタルケア」をリモート化で補うことを、多くの企業が困難だと感じていることの現れではないか。