「エンプロイーサクセス」を日本に広める
Boulderが日本で広めようとしているのは、「エンプロイーサクセス」という概念だ。牟田氏いわく、エンプロイーサクセスとは、顧客を成功に導きLTV(ライフタイムバリュー:顧客生涯価値)を最大化する「カスタマーサクセス」のように、従業員の成功を事業の成功と考え、自社の収益と従業員の幸福度を両立させる、という考え方だ。前述のとおりリモートワークの普及で従業員のコンディション管理が難しくなった今、エンプロイーサクセスは企業にとってより重要な指標となったと牟田氏は言う。
海外では、SAPが2018年11月に80億ドル(約9100億円)で買収した「Qualtrics」などが先行してエンプロイーサクセスを提唱している。だが、米国などでは日本と比較し離職率が高く、転職が一般的であるために、こうしたサービスは主に離職・転職予測に使われている。一方、Wellは終身雇用が当たり前である日本企業向け。従業員の幸福度を向上させ「長く働いてもらうこと」を念頭に開発されており、企業が得られる最大の効果は、離職率の低下だ。
今、企業にとってはSlackやZoomといったコミュニケーションツールの導入が最優先であることは確かだ。そして業務効率化を目的とし、業界特化型SaaSを導入する企業も多い。今後Boulderが導入社数を増やしていくためには、Wellを通じて「離職率の低下」だけに留まらない、より多くの付加価値を提供していく必要がある。
調達した資金で外部サービスとの連携を視野に開発を加速
牟田氏はWellで提供する次なる価値として、「リファラル採用の効率化」を挙げる。今回調達した資金をもとに、外部サービスとの連携を視野に入れた開発を進める。
従業員の満足度が高くなければ、リファラル採用で知人を連れてきたいとは思わないだろう。そこで、牟田氏はWellを使い従業員の満足度を上げつつ、例えば社員が各々採用に関われるATS(採用管理)ツール「HERP Hire」などと連携することで、企業のリファラル採用にも活用できるようにしたいと考えている。
牟田氏は現在のWellについて、「従業員のコンディションを可視化できるが、企業の課題解決はまだまだできていない状況」だと説明する。そこで前述のとおりリファラル採用に活用できる機能を開発するとともに、従業員の体験を向上させるべく、外部サービスとの連携も進めている。年内にはパートナーとの取り組みも発表できる見込みだという。
2019年9月に提供開始したWellのアルファ版は約10社にクローズドで提供されてきた。Boulderでは2021年の8月までにベータ版を100社に導入し、検証を続けることでPMF(プロダクトマーケットフィット)を目指すという。