秋元氏も今回のラウンドではトラクションが出ており、既存投資家からの追加投資が中心だったためスムーズに進んだというが、前回の調達時はかなり苦戦したそう。数カ月にわたって延べ80人の投資家と話をするも「この領域は圧倒的に難しいよね」と言われることが多く、出資が得られない期間も続いた。
「ビジネスとしてスケールさせるのが難しい領域ということは、サービスを運営する中でも実感していました。ただ同時に、間違いなくニーズがあることも感じていたし、逆にこの領域で突き抜けることができたら大きな可能性があることもわかっていたので。もちろん続けてこれたのは、そこに自分自身の原体験やこの事業にかける思いがあることも大きかったです」(秋元氏)
近しいプロダクトも存在する中で、食べチョクはトラクションを積み上げるためにどこに注力してきたのか。改めてその特徴を聞いてみたところ「プラットフォームではあるけれど、プラットフォームぽくないところが自分たちの特徴かもしれません」という言葉が返ってきた。
「場所だけを提供します、というよりは商品企画などにがっつり入って生産者の方と一緒に商品を作っています。たとえば食べチョク福袋という取り組みを今やっているのですが、これも自分たちから企画して、生産者の人に商品を作ってもらっているんです。生産者の方々はプロダクトアウトの発想に近くて、自ら作ったものをベースに考えることが多い。そこに自分たちがお客さんよりの視点も踏まえて『こういうニーズがあるから、こんな商品を作ってみませんか』と提案をして一緒に進めていくことで、より魅力的な商品を作りやすくなる部分もあると思っています」(秋元氏)
ヤマトと連携、物流への投資で生産者の“出品体験”の向上を目指す
今回調達した6億円は主に組織体制の拡充や広告宣伝費に投資する計画だが、中でも今後生産者側の体験向上により多くのリソースを投じていくという。
「今後自分たちにとって重要なのは、いかに早く独自の価値を築き上げることができるかということです。この市場に新たなプレイヤーが参入してくることも十分に考えられる中で、ビジネスモデルを真似されたとしても負けない、本質的な価値を高めていく必要があります。それがこのビジネスにおいては生産者になると思うんです。いかに生産者が出品しやすくなる環境を整えるか、全く経験のない生産者でも迷わず登録できてそこから成長していけるようになっているか。商品企画もその1つですが、それを後押しする仕組みを作ることに力を入れていく計画です」(秋元氏)