「お酒が飲めない人はお洒落なレストランに行っても、飲み物の選択肢がジュースや炭酸飲料しかありません。私もお酒が飲めないのですが、友だちとご飯に行ったとき、友だちは楽しそうにワインのリストを見ている姿に少し寂しさも感じていたんです。海外を見てみると、ニューヨークやロンドンにはノンアルコール専門のバーがありますし、ノンアル派の人たちが楽しめるカルチャーが根付いています。そんなカルチャーが日本にもあったらいいのにと思い、完全ノンアルコールバーを立ち上げることにしました」(山本氏)

0%の立ち上げに込めた思いについて、山本氏はこう語る。今回、店舗のプロデュースを担当した彼女はもともと、ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)で新規事業の立ち上げやアプリのUIデザイナーを経験したり、子会社のペロリに出向して女性向けキュレーションメディア「MERY」のイベントプロデュースやCMの制作に携わったりしていた人物だ。

新卒からIT業界でキャリアを積んできた山本氏は、なぜ新たにオフライン店舗をプロデュースしようと思ったのか。彼女の挑戦の原点に迫る。

完全ノンアルコールバー「0%」

建築学科から、新卒でDeNAに入った理由

山本氏のルーツを遡ると“建築”にたどり着く。彼女は東京大学工学部建築学科を卒業しており、学生の頃は土地(敷地)を調査し、構造や材料、建築方法を考え、そこにどんな住宅や施設を建てるのか、実際に図面を引き、模型をつくってプレゼンしていた。

建築学科を卒業した人の多くは"建築士”になることを目指し、設計事務所や建設会社に入社するキャリアが一般的だ。山本氏も「建築士を目指すキャリアも面白いと思っていました」と当時を振り返るが、最終的には違った道を選択する。

「建物が完成するまでの一連のプロセスを学ぶ中で、私は建物そのものよりも、建物の中に"何をつくるか”に興味があると気付いたんです。実際、私が大学の授業で提出する課題の中身は全部中身(コンテンツ)についてでした。それでいろんな会社のサマーインターンを受け、そこで出会った人たちと企画コンペをやってみて、やっぱり自分はコンテンツを考える方が合っていると思い、事業会社へ就職する道を選びました」(山本氏)

事業会社と一口言っても、さまざまな選択肢がある中でなぜDeNAだったのか。山本氏によれば、実際に中で働く人や、同じくDeNAを志望する人に魅力を感じたからだという。

「正直、就職活動をしているときは明確に”こういうことがやりたい”という思いがあったわけではありません。事業内容にすごく興味があったわけではなく、“人”にすごく魅力を感じ、DeNAに決めました。当時、親からは『何をしている会社なの?』と疑問を持たれましたが、振り返ってみると良い判断をしたな、と思います」(山本氏)