「チル」が求められる時代へ

例えば、広告企画・制作を手掛けるPOOL(プール)のCEO・小西利行氏と一緒に仕事をする機会があり、小橋氏とは小西氏の紹介を通して知り合ったという。

「実際にお会いしたところ、小橋はメディア系の新規事業をやりたいと話されていて。もともと、私はIT系の人とクリエイター系の人が混ざり合ったら面白いことができるのではないかと思っていましたし、メディア系であれば、私にも手伝える部分があると思い、まずは業務委託で手伝うことにしたんです」(山本氏)

1年ほど、いくつかのPR・ブランディング案件を手がけていた山本氏だったが、小橋氏と意気投合し、The Human Miracleのいくつかのプロジェクトに関わっていく。そうした中で、山本氏が目をつけたのが完全ノンアルコールバーだった。

「この数年でたくさんの情報を浴び続ける時代になり、“何も考えない時間”が日常から消えてしまった結果、今はチル(のんびり)が求められるようになっています。その時代の流れにあわせて、最初は瞑想やアンビエントサウンドなど、心を整える時間を提供するサービスを検討していたのですが、個人的には日本にはまだ少し早いかもしれないと思い、もっとカジュアルな入り口として、完全ノンアルコールバーが良さそうだと思ったんです」(山本氏)

 

前述の通り、山本氏自身”お酒が飲めない”ことも大きな理由だった。小橋氏に「完全ノンアルコールバーを立ち上げてみたい」と伝えると、すぐに賛同し、約1年前からプロジェクトが始動した。

実際、ドリンクのメニューなどは山本氏が今年1月にイギリスで開催されたノンアルコールドリンクに焦点を当てたフェス型イベント「マインドフルドリンキングフェス」に参加し、そこで試飲をして、インスピレーションを得たという。

「よくあるジュースっぽくしたくなくて、クセや香りなどひと手間もふた手間も工夫を加えています。お酒に求めている部分は“深み”だと思うので、(食事との)マリアージュはすごく意識して後閑さんにオーダーしました。お酒の味を再現したノンアルコールドリンクではなく、新しいジャンルをつくりたいんですよね。今まではノンアルコールはお酒を飲む人が我慢して飲むもの、というイメージだったと思い、お酒を飲まない人たちがもっと違う楽しみ方ができるドリンクを意識しました。よく『なんで完全ノンアルコールバーにしたんですか?』と聞かれますが、誰かが飲めて、誰かが飲めないとなると、必ずどこかで共感できない瞬間が出てきてしまうので、フードもすべてヴィーガン対応にしてあります」(山本氏)