門奈氏は慶應義塾大学に在学中、Loco Partnersでの長期インターンを開始した。インターンといっても、当時の社員は元代表取締役の篠塚氏のみ。事実上2人目のメンバーとして同社に参画することとなった。
卒業後はLoco Partnersの社員となり、2017年に中国子会社を設立した際には支社長に就任。Reluxの中国展開を指揮した。合計で8年、Loco Partnersのシード期からKDDIによるM&A、M&A後の統合プロセスまでを経験。たった2人から成るスタートアップが数百人規模にまで成長する過程を見てきた。
門奈氏が起業に至った背景には、コロナ禍で販路を失った飲食店、食品メーカーや生産者が廃棄した食品を目の当たりにした経験がある。多くの飲食店は営業を自粛し、仕入れを止めた。卸売市場も仕入れを控えた。結果、出荷先を失った食品の多くは“食品ロス”となった。
もともと「中国で進んでいる事業を持ち帰り、日本に貢献したい」という志があった門奈氏は、「拼多多の仕組みを活用すれば日本の食品ロスを減らすことができるのでは」と考え、X Asiaを設立。カウシェの開発に着手した。
門奈氏によれば、中国ではEC化が進んでいるため、新型コロナの影響下でも日本ほど事業者の販路が課題として浮上することはなかったという。だが日本のEC化率はまだまだ低い。経済産業省によると、日本国内におけるBtoC(消費者向け)事業のEC化率は2019年、わずか6.76%だった。
門奈氏はカウシェの提供を通じて、より多くの食品が「無駄にならない」社会の実現を目指す。
食品の共同購入から総合ECプラットフォームを目指して
前述のとおり、X Asiaが提供するカウシェは拼多多に着想を得たサービスだ。現在はiOSアプリのみを提供しているが、Android版の開発も視野にある。
ユーザーはカウシェのアプリで欲しい商品を探し、LINE、Facebook、Twitter、Instagramやメールで家族や友人に購入を勧める。共同購入者が集まれば、掲載商品を最大55%の割引率で購入できる。
現在、カウシェは北海道産の帆立、霜降りカルビのスライスから地方のスイーツ、ミネラルウォーターまで、約500種類の商品を取り扱っている。商品を販売している事業者は飲食店、食品メーカー、生産者などさまざまだ。販売はカウシェが代行するが発送は各事業者が行う。
門奈氏いわく、カウシェに商品を掲載している事業者は、売上以上にSNS上でのバイラルによる認知の向上に期待しているという。ユーザーは共同購入者を探す際、商品ページへのリンクをシェアする。そのため、各SNSのタイムラインで不特定多数に共同購入を促すことも可能だ。同氏はインフルエンサーが、SNSやLINEなどのグループで商品紹介することを想定している。