この期間に感じた世の中の変化やメンバー自身の価値観の変化は、商品名や打ち出し方を見つめ直す良いきっかけとなった。中でも、移動の減少が仕事にもたらす影響は、チャプターを通じて解決したい問題でもあった。

気分転換したり、アイデアを出すためにお茶する──そんな「ちょっとしたひと区切り」がなくなっている。暮らしや仕事のシーンにいい「一区切り」の習慣をつくる存在としてチャプターを使ってもらいたい。そんな思いがあった。

一人分の煎茶をデスクで飲む、その行為に最適な形を目指して開発してきたプロダクトは、「オフィス用」の枠を越え、『いい仕事は、いい「一区切りから」』の想いを乗せたリモートワーク時代の湯のみへと進化することになった。

 

予約販売のプラットフォームを自社のECサイトからクラウドファンディングサービスへと変更すると決断したのは、販売を開始する1カ月前のこと。「素地なのに汚れず頑丈、湯量も測れ、100年使える耐久性を持つミニマルデザインの湯のみ」は、それだけでも魅力を感じてもらえたかもしれない。

しかし、込めた想いを最も伝えられる仕組みを考えたとき、このプロダクトのリリースにふさわしいのはクラウドファンディングだろう、との結論に至った。

9月25日現在、Makuakeでのチャプターの応援購入者は500人を越え、1500%の目標達成まであと一歩に迫っている。美濃加茂茶舗、TENT、丸朝製陶所がこのプロダクトにかけた想いは、リモートワーク時代の働く人たちに少しずつ届き始めている。

日本茶は面白い。だからこそ、“道具”であれ

日本茶は歴史が長く、茶室やお作法のイメージも強いため、とっつきにくい分野である。一方で、無料で出てくるものと思われていたり、ペットボトル飲料のように喉の乾きを潤す存在として普及していたりするなど、“あって当たり前”の側面も持つ。言ってしまえば「0か100か」の世界である。

いま、日本茶はかなり進化していて面白い。産地ごとの味わいを楽しんだり、シングルオリジンの概念が広まったりする。ワインやコーヒーのような楽しみ方の土壌ができつつある。生産者の自社ブランドからお茶のセレクトショップ的なブランド、フリーランスの茶人まで、プレイヤーも提案内容もさまざまだ。しかし、一般の人が嗜好品として十分楽しめるクオリティのプロダクトが揃っているにも関わらず、他の商材ほど生活に入り込めていないのが実情とも言える。

特に「仕事中」の飲み物の選択肢は、コーヒーに完敗していると言っても過言ではない。ストレートに「日本茶っていいですよ」と伝えても誰も見向きもしないだろう。チャプターはまさに日本茶を習慣にしてもらうための“道具”。飲み物そのものではなく、ワークスペースに必要な「一区切り」と、それを実現するガジェットの提案なのである。