そして、チーム全員がユーザー視点でものづくりするので、誰かを納得させるためだけの無駄な資料も議論も一切ない。無駄を徹底的に排除し、本質に向き合うプロセスづくりをすることにこだわっている。

「良い」ブランドづくりには、プロダクトとクリエイティブ、マーケティングの信頼関係が必要だ。これは組織体制だけではなく、本質的な意味で三位一体になり、同じ目標に向かって進めるチームづくりをすることがとても重要なのだ。その結果、イノベーティブな製品やクリエイティブが生まれ、そして常識にとらわれない、今までにない新しい価値やものづくりをしてやろうという気概がチームに生まれていく。

ペルソナよりも目の前の消費者

 

製品開発やマーケティングにおいて、よく語られることのひとつが「ペルソナ論」だ。自分自身、これまでに何度もペルソナを書き出してきた経験はある。しかし時間をかけて議論しても、存在しない顧客像に意味を見出せないことは多い。特にメンバーが少人数で、メンバーがユーザー感覚を持てている場合、まだ見ぬ顧客のペルソナを完成させることに時間を使うよりも実際に存在する目の前の消費者を見ることのほうが大切だ。

例えば、実際にお客さんになってくれそうな人にはとにかく会ってスキンケアの話をしてみる。最近使っているもの、なぜそれを買ったのか、実際に使ってみてどう感じたのか。会う人すべてに聞いていく。そして何より自分自身が美容の世界に純粋に触れて、感動する感覚をしっかりと持っていられることがとても役に立つと信じている。

常識にとらわれず自由に発想する

 

SISIはスキンケアのクレンジングからクリームまでの、いわゆる「ライン」を持たないブランドだ。ラインをつくらない理由は3つある。まず最初に人に個性があるように、ブランドの傘下にある一つひとつの製品にも「もっと個性があればいいのに」と思ったからだ。

つぎにライン使いをしなければスキンケアの効果が出ないような、ブランド視点での押しつけを与えたくなかったからだ。そして、そもそもひとつのブランドの商品だけを揃えて使っている人が少ないという背景もある。

SISIは、これまでのスキンケアのデザインの常識を覆す“カラフルなデザイン”を採用した。最初は「カラーコスメのワクワク感をスキンケアにも持ち込みたい」と思ったことが始まりだった。手にとったときに思わず気分が上がるような、そんなデザインでスキンケアブランドを設計したかった。

デジタルを販売チャネルの中心とするD2Cの強みを活かし、人の個性のように、製品一つひとつにもカラーでキャラクターを表現していけたらと考えた。デザインにはトレンドがあるので、どうしても既視感を感じてしまう製品が多い中、あえてそこをブレイクスルーできるデザインをつくるよう心がけて生まれたのがSISIだ。