「D2Cなものづくり」はスタートアップだからできる
何かの記事で、D2Cの定義とは「卓越した少人数が今までにはない発想、大企業にはできない発想でものづくりを行い、デジタルを活用しマーケティングや物販を行うこと」と書かれていた。これは自身の経験とも重なるところがあり、とても記憶に残っている。自身の経験とは“大企業とD2Cの立ち上げ”という全く異なるブランドづくりを経験できたことだ。
大企業にいた頃は、クリエイティブチームとの関係は薄いものだった(当時はそういう意識はない)。広告代理店の営業担当にオリエンテーション(プロジェクトの要件定義)をして、その営業の方がデザイナーと会話する。
私のようなマーケティング担当者が直接デザイナーと話をする機会はあまりなかった。そしてプロジェクトに関わる人数が多いため、意思決定に時間がかかるという課題もあった。
一方で、さまざまなリソースに限りがあるスタートアップのD2Cブランドは、大企業と同じやり方をしていては絶対に勝てない。全員で知恵を絞り、スピード感を持ち、新しい発想でものづくりをしなくてはならない。そして、それがスタートアップの醍醐味でもあると思う。
探すのはOEMではなくて開発者
「自分でブランドをつくろう」と思い会社を辞めたとき、まず最初に必要なものは、事業計画でも、資金でもなく、製品だった。
私が知っているある起業家はD2Cブランドを手がけているが、自社工場を持っておらず、ほぼすべてのパターンにおいて、開発を請け負ってくれるOEM(相手先のブランドで販売される製品を製造する)会社の選定から入る。
OEMの化粧品開発のプロセスにおいては、メーカー(事業主)と開発担当者の間にOEM先の営業担当が入ることが一般的なため、直接開発の人とは会話することはほとんどない。先ほどの大企業でのマーケティング担当とデザイナーとの距離感に似た構造が、ここにもあると思う。
しかし、世の中に新しい価値を生むものづくりをしたいと思ったときに、本当に必要なのは本気で向き合ってくれる開発者だ。私は「良い製品は良い開発者からしか生まれない」と考えている。そういう開発者をチームに巻き込めるとブランドが強くなり、お客様を感動させられるものづくりができるようになると信じている。だから最初に探すのはOEM会社ではなく、開発者という視点がとても大切だと思う。
三位一体なチームビルディング
SISIは製品の基本処方が完成してから、わずか6カ月でブランドをプレローンチしている(一般的な大手化粧品メーカーの場合、3年以上かかる)。6カ月というスピードに驚くかもしれないが、製品開発のプロセスを省いているわけでも、納得がいかない製品を出しているわけでも決してない。むしろ開発者やデザイナーとの会話量はただならぬ量で、日々熱い議論が物凄いスピードで交わされている。