ただ、韓国国民は北朝鮮の思惑通りに反応するのか。文在寅(ムン・ジェイン)政権が北朝鮮の無法ぶりを見過ごしてきたことに対する危惧の念が高まっている現状から、かえって逆効果になる可能性もある。

 今回は北朝鮮の一連の行動と、それらに対する韓国の国内世論について分析する。

北朝鮮の軍事偵察衛星の性能について
確立した評価は出ていない

 北朝鮮は「新型ロケットは予定された軌道に沿って飛行し、12分後に衛星を正確に軌道に進入させることに成功した」と発表した。北朝鮮はこれまで5月と8月に衛星打ち上げに失敗していたが、今回の打ち上げにはロシアからの技術支援があったのだろう。

 さらに、北朝鮮は金正恩氏が国家航空宇宙技術総局の平壌(ピョンヤン)総合管制所を訪れ、試験的に撮影した衛星画像を直接確認したと伝えている。

 その画像は、ホワイトハウスや韓国やグアム、沖縄にある米軍基地などである。

 ただ、北朝鮮はその画像を公開しておらず、その精度については不明である。それでも北朝鮮は12月1日から正式に運用を開始すると主張し、安全保障協力を進める日米韓3カ国の動向に対する監視を強化していく構えである。

9.19合意の全面破棄を
宣言後の北朝鮮の動き

 北朝鮮は、9.19合意を全面破棄すると宣言すると、最前方監視哨所(GP)の復元作業に着手し、重火器を持ち込む動きを見せているのに続き、板門店(パンムンジョム)共同警備区域(JSA)非武装化も廃止した。複数の米韓筋によると、JSAの北側警備要員は先々週後半から拳銃を携帯して勤務しているという。ちなみに韓国側のJSA警備要員は非武装を維持しているが、JSAを管轄する国連軍司令部は対抗措置を考えているという。

 また、西海(ソへ)北方限界線(NLL)地域にある北朝鮮軍の坑道型海岸砲の開門事例も急増したという。

 尹錫悦大統領は「相手の善意に頼る平和は夢と虚像にすぎないということを人類の歴史が証明している」と強調した。

 新任の申源湜(シン・ウォンシク)国防相は全軍主要指揮官会議で「敵が挑発すれば『先に措置、のちに報告』の概念に基づいて対応し、『即刻、強力に、最後まで』という原則で断固対応すべき」と指示した。