開催地決定当日には、プレゼンテーションの様子をYouTubeで生配信し、主要テレビ局では特別番組も組まれたが、初回の投票でリヤドが圧倒的な票数を獲得し、釜山は敗北。この結果には、関係者から失望の声が上がり、韓国内の報道でも大きく取り上げられた。

当の釜山市民の反応は?

 しかし、釜山市民の間では、この結果に対する反応は意外に冷静だった。「落選は残念だが、現実的に考えたら妥当かもしれない」という声が多いのだ。

 釜山は韓国第2の都市でありながら、人口減少が進み、ソウルとの経済格差も拡大している。若者たちは進学や就職の機会を求めてソウルや首都圏に移住する傾向が強い。万博の誘致と開催は、これらの問題を解決し、釜山市の活性化の起爆剤になることを多くの市民が期待していた。しかし、万博開催に伴う再開発やインフラ整備の問題が、開催が決まったとしても解決できるのかという不安も根強かった。

 加えて、2025年の万博が大阪で開催されることを考慮すると、釜山市が選ばれる可能性は低いという見方もあった。オリンピックやワールドカップの開催地選定においても、連続して同一地域から都市が選出されることは稀(まれ)であり、この点からも釜山市が選出される難しさは、ある程度予想されていたともいえる。

釜山市の課題~空港拡張と交通基盤整備

 釜山市は現在、空港の拡張や交通基盤の整備、再開発など、多くの課題を抱えている。金海(キメ)国際空港は欧米やオセアニアへの長距離便がなく、仁川国際空港を経由する必要がある。一方、アジア路線は集中しており、コロナ禍後の出入国規制の緩和や日本ブームの影響で、金海空港は利用者数に対して設備や人員が追いついていない状況である。加徳島(カドクド)に新空港建設の計画があるものの、2035年開港予定を2029年に前倒しする提案には懸念や疑問が寄せられていた。

 観光客の増加に伴う交通渋滞の慢性化や、万博会場として使用予定だった釜山港の再開発など、課題は山積していた。韓国は一般に中長期的な計画の立案と進行に課題があり、過去にはさまざまな問題やトラブルが発生している。例えば、前述のBTSコンサートは、当初郊外での開催が計画されていたが、交通と安全性の懸念から、最終的にサッカーW杯で使用された競技場で行われた。また、今年8月に開かれた第25回世界ジャンボリー(ボーイスカウト・ガールスカウトの祭典)では、猛暑対策の不備や、開催地の自治体による予算の不正使用などが問題となった。