政府・自治体・企業が一丸となって取り組んだ万博誘致活動で、韓流エンターテインメントを前面に出した釜山市は一定の評価を得たが、具体的な計画案や過去の事例による不安材料も多かったと思われる。同じく今回落選したローマも、少子高齢化や若者の失業率上昇など共通する問題を抱えている。サウジアラビアの経済力を考慮すると、リヤドに敗れたことは仕方ないとも言える。
万博はもう時代に合わない?
日本でも来年の大阪万博を巡り、工事遅延や予算オーバー、撤退国の発生などの問題があり、開催中止を求める声も上がっている。韓国でも大阪万博の問題は報道されており、釜山が万博を開催していた場合、同様の問題に直面する可能性があった。「万博はもう時代に合わないのでは」など、万博開催の価値や意義に疑問を持つ声が韓国でも出ている。
万博やオリンピックなど、国際イベントの誘致には、利権が絡んだり、金や政治の問題に発展したりといった醜聞が珍しくない。これらの国際イベントがもたらす経済効果について、「国民や市民に恩恵があるとは言い難い」「メリットよりデメリットのほうが大きい」という意見も出ている。
今回の釜山市の敗北について、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は「力が及ばず申し訳ない」と国民に向けて謝罪の談話を発表し、左派系野党や一部メディアはこれを政権批判の材料としている。しかし、釜山市民の反応は冷めたもので、実は国民も万博にそれほど期待していなかったふしがある。今回の万博誘致失敗は、韓国における今後の国際イベント誘致の方向性を見直す、いい転機になるかもしれない。