韓国市場の変化と消費者ニーズ

 ニトリは今後の展開として、2024年4月までに3~4店舗をオープンさせる計画を立てており、10年以内には韓国全土で200店舗の展開を目指している。

韓国のニトリ1号店は、eマート内にオープンした(写真:ニトリプレスリリース)韓国のニトリ1号店は、eマート内にオープンした(写真:ニトリ プレスリリース)

 韓国では、世界最大規模のIKEAが進出して10年が経過し、韓国の大手家具メーカーも存在する。特にIKEAはニトリの強力なライバルとみられており、他社との競争にどう対応していくかが注目されている。

 韓国で外資系企業の進出が活発化したのは2000年代からであり、それにより生活スタイルや質が大きく変化した。つまり、選択の幅が広がったことによって、消費者の目が肥え、商品の品質も高まっていったのだ。

 筆者自身も20年前に韓国に来たばかりの時には、家具や家電選びに苦労し驚かされた。当時、韓国では大きなサイズの家具や家電が主流で、シングルや新婚向けの商品は少なかった。フランチャイズの家電や家具店も少なく、家具選びはデパートや市場、専門店で行うのが一般的だったが、価格に見合わない種類やデザイン、使い勝手の商品が多く、満足な買い物は困難だった。

 しかし現在の韓国では、多くのアパートにクローゼットや食器収納棚が備え付けられており、大型家具の必要性が減っている。結婚するときも、食卓や書斎の机、ベッドなど最低限の家具だけそろえるスタイルに変わってきている。さらに、少子化や非婚化の進行により、核家族やシングル世帯が増え、小さなサイズのアパートやワンルームの需要が急速に高まっている。これに伴い、小型でコンパクトな家具や家電、機能性を重視した製品が好まれるようになっている。

 こうした変化をニトリも把握しており、まずは日本と同じ商品を販売しながら、韓国のニーズに合わせたデザインやカラーの商品開発を積極的に進めていきたいとしている。こうしたことからも、韓国市場を重要視していることがうかがえる。消費者の選択肢が広がることで市場の競争が活性化されるという意味でも、ニトリの進出はポジティブな刺激になると期待されている。