サイバー攻撃への対策として
一般社員ができること

松原さんPhoto by HasegawaKoukou

松原 職場のIT担当者やサイバーセキュリティ担当者に、まずは「いつもありがとう」とお礼を言うところから始めてみてください。

 米大手リサーチ会社・Gartner(ガートナー)の調査によると、なんと、サイバーセキュリティ担当者の半数が2025年までに仕事を辞めたいと考えています。

 さらに、そのうちの25%は、次はまったく別の職種に就きたいと回答しています(※)。​
※参考:Gartner Predicts Nearly Half of Cybersecurity Leaders Will Change Jobs by 2025

 耐えられないレベルのストレスがその背景にあります。コロナ禍以降、サイバーセキュリティ担当者の「燃え尽き症候群(バーン・アウト)」が激増しています。別の調査ですが、辞めたい理由の第1位は「感謝されないこと」なんです。

 普段から「こういうリスクがあるので、こういう対策を取ってください」と提言しているのに、社員の人たちに聞いてもらえない。デジタル化が進み、仕事は増える一方なのに、対策のための予算も人も増えない。それでも「守れているのが当たり前」。問題が起こったときには叱責される。それでは人も定着せず、人手不足になるのも当然です。

田中 担当者からすると、「言わんこっちゃない」って言いたくなりますよね。能力がある人たちはほかの職種へ流れてしまう。

松原 ですから、職場の担当者に「これをやってください」と言われたら、「今、忙しいから」と後回しせずに、感謝し、すぐにパッチを当てる(ソフトウェアやアプリを最新の状態に更新する)などの対応を取ってください。それが、担当者のやる気、ひいては、企業のサイバー攻撃対策への、何よりの貢献になります。

長谷川 なるほど、専門性を有している人が、それぞれの持ち場で一生懸命働いているから、企業も社会も回っているということを、あらためて考えさせられますね。そしてその循環を支えているのが「人への感謝」なんですね。

田中 これからは、関わっている組織でサイバーセキュリティ担当者のかたから指示があれば、感謝と敬意を持って、すぐに言われた通りにしようと思います。本日は本当にありがとうございました。

松原 こちらこそ、ありがとうございました。