2023年はコンビニ業界にとって“復活の年”となった。人流の回復や猛暑で売り上げが伸び、大手各社の事業利益や営業利益は過去最高を記録した。だが、絶好調ともいえるコンビニ業界を取り巻く環境は厳しさを増している。実は、最大手のセブン-イレブンでは、ある看板商品が消えつつあるのだ。特集『総予測2024』の本稿では、セブンの看板商品の消失にも絡む、24年にコンビニ業界を襲う三つの荒波の正体を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 下本菜実)
セブンの日販は初の70万円超え
大手3社の営業利益は過去最高
4年ぶりに“行動制限のない夏”を迎え、2023年のコンビニエンスストア業界は好況に沸いた。全国で花火大会や夏祭りなどのイベントが開かれ、人流が回復。ビジネス面でも、リモート勤務から、オフィス出社に切り替える企業が相次いだ。
小売業の中でも特にコンビニ業界にプラスに働いた要因が猛暑だった。東京では7~9月にかけ、過去最長となる64日連続の真夏日を記録。ドリンクやアイスクリームなど利益率の高い商品の売り上げが伸び、好業績に結び付いた。
コンビニ各社が10月に発表した24年2月期上期(3~8月)の数字にもその好調さが表れている。国内大手3社のセブン&アイ・ホールディングスとファミリーマート、ローソンの営業利益や事業利益はいずれも過去最高を記録した。
1日当たり店舗平均売上高(日販)も新たなステージに突入した。セブン-イレブン・ジャパンの日販は70万1000円となり、初めて70万円を超えた。ファミリーマート(55万4000円)やローソン(55万1000円)も高い水準となった。
一見、コンビニ業界は空前の好業績に沸いているようだが、手放しでは喜べない事情がある。日本フランチャイズチェーン協会によると、23年10月の来店者数(全店ベース)は14億0734万人。実はこれは、新型コロナ禍前の19年10月の来店者数15億1166万人を下回る。つまり、来店者数は完全に回復したとはいえないのだ。
日販は上がり、業績は上向いたものの、コンビニ業界を取り巻く経営環境は厳しさを増している。次ページでは、24年のコンビニ業界を襲う三つの課題の正体を明らかにする。課題の一つは、すでにセブンに影響を及ぼしている。ある看板商品が消えつつあるのだ。業界の課題を明らかにするほか、大手3社の生き残り戦略の中身も明らかにしていく。