「環境負荷があるものを食べ続けるのではなく、週に数日、(代替肉を食べることで環境保全に)協力したいという、ちょっとアップスケールな考えの“現代版ヒッピー”ともいえるような若者たちの市場がある」(落合氏)

 肉食の拡大は気候変動への悪影響にもつながると懸念されている。牛はげっぷやおならでCO2以上に温室効果のあるメタンガスを大量に排出しており、畜産規模の拡大は温室効果ガス排出量の増加につながる。人為的に排出されている温室効果ガスの約14%が畜産業に由来しているとの試算もある。加えて牛は1頭あたり1年に1万ガロンもの水を消費するなど、家畜産業は地球上の多くの天然資源を消費してしまう。

 元ビートルズのポール・マッカートニー氏が地球環境保護などを目的として提唱している、月曜日に肉を食べない運動「ミートフリーマンデー」が広がりを見せていることからも、健康や環境に対する意識の高い消費者は増加傾向にあるといえるだろう。米ニューヨーク市では全公立学校が約110万人もの生徒たちに対し週に1度「個人、そして環境の “健康”のため」に朝食やランチでベジタリアンメニューを提供している。

代替肉を一過性のブームでは終わらせない

 北米を中心に、現在ではブームといえるほど代替肉は盛り上がっている。日本では冒頭で紹介した大手食品メーカーのほかにも、培養肉のインテグリカルチャー、蚕を原料としたシルクフードのエリーなどが代替肉を開発しているところだ。さらに3月からはモスバーガーによる100パーセント植物由来のハンバーガーやCoCo壱番屋による大豆ミートのメンチカツの発売も続いている。この国でも本格的な脚光を浴びるのは間もなくだろう。

 だが落合氏は植物肉の話題性について「一過性のブームにとどまりかねない」と指摘する。おいしさや価格はもちろんのこと、「違和感のない」食べ物でなければ顧客の期待には応えられないと考えているからだ。

 DAIZではタンパク質危機が近づくにつれ、加工肉に含まれる植物肉の割合が増えていくとみている。そのためには畜産肉と混ぜても違和感の生じない優れた素材が不可欠となる。

「バターとマーガリンを食べ比べると、どちらが動物性かはすぐにわかる。『バターを期待して食べたらマーガリンだった』という時はがっかりするが、同じような感想が今までの植物肉にはある。DAIZの植物肉原料を使えばそれはなくなるはずだ」――落合氏はこう気を吐いた。

 DAIZは当面、植物肉原料のサプライヤーとして、ニチレイフーズをはじめとする食品メーカーや、小売、流通企業への販売を主軸としていく構えだ。生産工場も増設しており、2020年中には年間3000トンの生産キャパシティを目指す。