Zoomを通じて毎日の「お茶会」も開催
雑談が情報共有のクッションに

 ソフトウェア面では、従来から社内コミュニケーションにSlackを利用していたため、大きな変化はなかったというが、新たに加わった工夫として「雑談部屋」の活用が挙げられている。

 雑談用チャンネルは全社横断で設置されていたが、見ていない人も多かったため、新しくチームごとに雑談部屋チャンネルを設定。宮城氏や総務、IT担当などが所属するバックオフィス系のチームでは、雑談部屋に加えて、毎日16時から30分ほど、Zoomで全員が顔を合わせる機会を作って「お茶会」を行っている。他のチームでも、朝会など、それぞれのタイミングで顔を見せ合う工夫が行われているそうだ。

「後ろに本棚が見えたり、お子さんやペットが登場したり、メンバーの生活が見えるのは新鮮な感覚。決算で遠慮なくやり取りするためにも、『今日は何を自炊した』といった雑談がクッションとして重要になった」(宮城氏)

 メンバーからは「リモートになったことで、逆に前よりいろいろなことを話す機会が増え、それが文字に残ることで理解が深まっている」との声も挙がっている。雑談があることで「気が紛れてさみしくない」といった効用のほか、「メリハリが付いて、逆に集中できる」という人もいて、新しい働き方はなかなか好評のようだ。

 チーム別チャンネルの設置だけでなく、全社でも、自宅での運動や自炊の様子をSlackに投稿して、従業員同士の心理的距離を緊密にする工夫や、通勤時間の削減を利用した勉強会実施などが行われているという。

 安岡氏は「今までは、エンジニアはオフィスでも粛々と仕事をしていたので、1人で仕事ができるものなのだろうと思っていたが、Slackでの工夫などいろいろ言い出したのはエンジニアで、これは新たな発見だった」と語っている。

パソコン1台渡すだけのリモートワークは無意味
企業がインフラを用意することが重要

 リモートワークでの上場初の決算発表完了を成し遂げた要因について、安岡氏は「ノートパソコン1台渡して『これでリモートでやって』というのではだめ。リモートワークを支えるためのインフラは、用意する必要がある」とも語る。ビザスクでは、先に挙げたクラウド請求書や「Google Cloud プラットフォーム」など、以前からリモートで働くための環境のお膳立てはあったそうだ。

 決算説明会のライブ配信業者など、外部との交渉をZoomで行っていたという宮城氏は、社外の対応について「4月1~2週目ぐらいには、みんなZoomに慣れてきて、やり取りしやすくなった感触がある」と話している。「経理だから行かなきゃいけない、というのではなく、出ないようにするにはどうすればいいか、という考え方で進めたことがよかったのではないかと考えている」(宮城氏)