「上場までは(決算情報の取りまとめや開示について)主幹事証券会社の手厚いサポートがあったのだが、上場してしまうと誰も手伝ってくれない。業務は社内メンバーで行い、監査法人とともに決算へ向けて作業を進めていった」(宮城氏)
その間も新型コロナウイルスの感染拡大は下火になる気配を見せない。3月24日には東京オリンピックの延期が発表され、3月25日・26日には新たな感染者数が全国で100人近くに跳ね上がった。ビザスクも3月26日、全従業員を対象としたリモート勤務実施に踏み切る。社内でフルリモート対策本部を仕切り、対応を行ったのは宮城氏の上司にあたる、ビザスク取締役CFOの安岡徹氏だ。
監査法人ともクラウドで情報共有し
リモートで乗り切った2月期決算発表
東京証券取引所によれば、3月期本決算の上場企業2299社の中で決算発表の延期を表明しているのは4月30日の時点で353社。このうち122社は発表日が未定となっている。新型コロナウイルス感染拡大で出社が制限される中、決算集計や書類作成、監査作業などが遅れているためだ。
ビザスクは幸い決算期が2月だったこともあり、緊急事態宣言が出された時点ではある程度作業が進んでいた。ただし、全社リモート勤務に切り替えた時点では、決算業務の進捗は「8割ぐらいだった」と宮城氏。「決算業務で仕上がり8割というのは、そこから細かいところを詰めていくタイミングにあたり、むしろ『これからが正念場』というところ。あと半月で決算を出さなければならないという時にフルリモートに切り替わったので、工程管理は重要だった」(宮城氏)という。
宮城氏の他に2人の担当者が決算業務に当たったが、それぞれの工程が独立しているわけではなく、お互いが作業した内容を受け継いで、別の担当者が処理を行い、それをまた別の担当者の工程に引き継ぐことになる。このため宮城氏は当初、「今までなら『ちょっとここはどうなっている?』と聞けたところを、会話がないことで、処理スピードが下がるのではないかと懸念した」と語る。
そこで宮城氏は「気になったことがあれば、メンバーに(チャットツールの)Slackでメッセージを送りまくった」という。「期限の決まっていることなので、余裕がないということもあったが、いい意味で『遠慮せずに』やり取りを行った」(宮城氏)
IPO後最初の大イベントとなる本決算。同じメンバーで1年ほどかけて“練習”していたため、業務そのものやコミュニケーションで大きな問題はなかったそうだが、郵送を伴う書類などは出社日を決めて一気に処理することとなった。また承認システムにはセキュリティ上、社内からしかアクセスできないため、オフィスに家が近い安岡氏に対応してもらうこともあったという。