また、多くの人が使う大手のアプリ開発者と協力し、アプリの動作を最適化していることも明らかにした。その1社がマイクロソフトで、Microsoft OfficeのWord・Excel・PowerPointの動作が披露された。また、Adobe製の写真編集・管理ソフトのPhotoshop、Lightroomが新環境で動作することも紹介されている。

マイクロソフトやAdobeとは密に連携し、Apple Silicon搭載Macへの対応を進めている。画像はAdobes製の写真管理ソフトLightroom アップルの配信動画より

このほか、アップル製の動画編集ソフトFinal Cut Proでは4K動画にリアルタイムにフィルターをかけて編集したり、4K動画3本を同時に再生するといったデモンストレーションも行われた。サーバー向けのOSとしてシェアが高いLinuxをMac上で起動する「仮想化」の処理をシステムとしてサポートしていることも発表されている。

 ただしアップルのプレゼンテーションでは、もとから用意された3Dファイルを操作したり、ゲームも1080pでの再生にとどめているなど、現代のパソコンが扱うには負荷が高い処理を避けていた印象もある。その実力を判断するには、実機で検証を待つのが賢明だろう。

「本当に高性能な処理」も将来的には実現してゆく

 現在は消費電力の高さが最大の特徴となっているArmベースのチップセットだが、アップルでは最上位モデルのMac Proを含めたすべてのモデルに採用していく方針を表明した。気になるのは、上位モデルでの処理性能の高さだ。

 ArmベースのCPUは、将来的にはIntel製と比肩するほどに性能を高めてゆく可能性もある。実はArmは高性能サーバーやスーパーコンピューターの分野でもシェアを伸ばしている。アップルの発表と同日の23日、理研のスパコン「富岳」が処理性能で世界一となったことが発表されたが、この富岳もArmベースのプロセッサーを採用している。

 すなわち、コンパクトで省電力性能が高いという特性は、多数並べることで、面積当たりの処理効率の高い設計を可能にするということだ。CPUの設計次第で、負荷の高い処理に耐えられるパソコン向けチップセットを生み出すこともできそうだ。

 Windowsの場合、すでに普及しているIntel・AMD CPU向けアプリとの互換性が普及のさまたげとなるが、Macではアップルが決断すれば、数年かけてArmベースのCPUに移行することは比較的容易だろう。アップルの“脱Intel化”が順調に進めば、MacはiPhoneとのつながりを深め、新しい競争軸を得ることになる。ティム・クックCEOがプレゼンテーションの最後に「今日はMacの歴史が変わる歴史的な日です」と高らかに表明しているように、ここ数年来停滞が続いていたMacに飛躍的な変化が訪れるのは間違いないだろう。