SaaSビジネスは解約率“0.5%”

 SmartHRは雇用契約や入社手続きをペーパレスで完結できるクラウドサービスだ。通常、人事担当者は従業員と書類をやりとりして労務関連の書類を作成する必要があるが、SmartHRを使えば、従業員が直接オンライン上で個人情報を入力して、書類の作成が可能になる。入力されたデータをもとに、役所に電子申請を行うことも可能だ。従業員情報を一元管理して社員名簿を作成できるほか、外部デベロッパーの勤怠管理サービスや採用管理サービス、クラウド給与計算ソフトと連携し、年末調整や給与明細、源泉徴収票の配布などもできる。

 サービスの開始は2015年11月。同年に開催されたスタートアップ業界向けイベント「TechCrunch Tokyo 2015」のほか、VC向け招待制イベントの「B Dash Camp」や「Infinity Ventures Summit(IVS)」などのプレゼンコンテストなどで次々に優勝して知名度を上げ、スタートアップ企業からユーザーを拡大してきた。

SmartHRの継続率は99.5%を誇る Photo by Y.ISmartHRの継続率は99.5%を誇る Photo by Y.I.
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 現在の導入企業は2万6000社。SaaSビジネスでは解約率の低さは重要な指標となるが、同社の解約率は0.5%。実に99.5%の企業が継続利用している。オプション機能の提供などで、ARPU(月額の課金額)も2018年2月からの1年間で2倍に成長した。今年4月には上位プランも発表しており、既存ユーザーのアップグレードも進んでいるという。宮田氏は高いサービス継続率について次のように説明する。

「解約した企業に対しては、その理由についてヒアリングしています。そして解約の予測というか、兆候を調べていて、サービスを使いこなせていない企業に対してはこちらから担当者に連絡をしています。このようなカスタマーサクセス(クライアント企業がサービスを使って業務的で成功体験を得ること)には、多くの人材をあてています」(宮田氏)

成長スピードは“ユニコーン企業並み”に

 SmartHRはサービス開始当初、社員数が数人規模の小さなスタートアップをターゲットにしていた。しかし次第に数十人から数百人規模の企業からの引き合いも増えてきたという。アルバイトが多く、全国に支店を持つような飲食業や小売業では、人事労務まわりの業務を本社に集中しているケースが多い。そういった企業がSmartHRに興味を持ったのだ。

 想定していなかった大きなニーズに出合い、開発方針も大きく変更した。最近ではホテルニューオータニが全社でSmartHRを導入したのを契機に、ホテル業界からの引き合いも増えているという。規模でいえば、従業員数約10万人(アルバイトを含む)の企業でも導入実績があるという。その成長スピードについて宮田氏は「ARR(経常収益)では創業期のTwilioやbox(いずれも米国でユニコーンとなり、上場したSaaS企業)並み」だと説明する。このSmartHRの成長速度が、宮田氏が「ユニコーン超え」を語る理由だ。