また、村田氏も「6年越しでようやくベンチマークを作ることができた。これを機に機関投資家から資金を預かるVCは増やしていきたいし、もっと増えていくと思っています」と語る。

「新卒ベンチャーキャピタリスト」のキャリアも用意

起業家を増やすだけでなく、インキュベイトファンドは新卒採用を実施するなど、投資家を増やし取り組みも行っている。2021年春に向けてすでに4人の内定が決まっており、入社後はベンチャーキャピタリストとして必要なノウハウや経験を積むなど、数年間の育成期間を経た後、自分のファンドを組成し独立する流れを想定しているという。

「リーマンショック以降、新卒採用に取り組むVCが完全に消えてしまったので、今はVCになるキャリアの入り口がない状態なんです。自分たちは新卒でVCになれる道があって今があるので、そういう道はきちんと用意しておきたいですし、今回のファンドサイズに備えて組織力は強化していかないといけない。自分たちも進化しないといけないので、4人の経験を生かしつつ、若い人も入れながら常に再現性を持ってパフォーマンスを発揮できる組織づくりも意識し、新卒採用を始めました」

「若かろうが、ベテランだろうが、良いときも悪い時も愚直に起業家をサポートできる人がいれば、スタートアップは盛り上がるので、多様なバックグラウンドを持つ人がどんどんVC業界に入ってきてほしいと思っています」(和田氏)

10年前のリーマンショック後に立ち上がり、これまでに複数の上場企業を創業期から支えてきた実績を持つインキュベイトファンド。今回、新たに立ち上がった総額250億円規模の第5号ファンドは、奇しくもコロナ禍で社会が大きなダメージを受ける中で立ち上がった。

今後の10年間、インキュベイトファンドはDX、パブリックセクターイノベーション、ディープテックイノベーションという3つの軸で、どれだけ社会的に大きなインパクトを生み出せるのか。彼らの“第二章”を形作る新たな挑戦は、これから本格的に動き出す。