いち技術者という目線で見ると、本田は僕以上にコンセプチュアルな人間なんです。テクノロジーや、自身が試したいコンセプトをもとに製品を生み出していくタイプの人間。私はそれをマーケットに合わせていく役割。彼がコーディングしていたのはフリークアウト設立から最初の6ヵ月くらいなんですが、本田のコンセプトを、いかにより世の中に受け入れられるプロダクトにしていくかということをやっていました。創業して3年半、プロダクトの実稼働としては3年ほどで、マザーズ市場にIPOするまでに至りました。
そこから広告市場がすごいスピードで変化する中で、広告にソフトウェアがしみ出していくというタイミングだったんです。広告にはソフトウェア技術が必要だとなり、市場が成熟していく中で、プロダクトドリブンな事業から、マーケットインでプロダクトを作っていくことで事業の幅を広げてきました。
お金の流れを知ることで、顧客を支援する
その後のフリークアウトで課題だったのは、『広告事業一本足打法』の次をどうするかということでした。広告は景況感に相関性を示すビジネスなので、景気に左右されないポートフォリオを持つ必要がありました。景況感を超える成長を考えると、新興国に進出するのか、インダストリーを変えるのかしないといけないという課題がありました。そこで海外と、景気に強い金融事業をやると決めました。それを推進していくためにフリークアウトの代表取締役となり(現在は取締役)、10ヵ国以上の海外投資やM&Aも実施しました。フィンテック領域については自社事業に加えて(プリペイドカード事業を手がける)カンムへの出資などを行いました。
そういう中で金融事業に大きな可能性があると感じていました。また同時に僕自身、90年代半ばからインターネットの可能性に影響されて生きてきたタイプなので、個人の力の進化を感じている中で、(決済サービスとECサイトの構築サービスを手がける)事業の可能性を感じて、ヘイを立ち上げました。
もともと考えていたのは、スモールチームや個人をエンパワーできる仕組みを作れるかどうかということでした。そういう方々が抱えている課題はいくらでもあります。そこで決済だけを提供するのが重要なのではありません。そういう方々の「商流に入る」ということが大事だと思いました。POSや決済システムからお金の流れが見えると、どういうニーズがあるかがわかります。
またそれ以上に大事なのは、コマースの売り上げが大きくなるほど私たちに入る手数料も増えるビジネスということです。たとえば私たちが資金をお貸しするようなことをしたとして、その手数料ではなく、売り上げに対する手数料で私たちも成長できます。個人やスモールビジネスを支援する最初の立場として決済とECを持っているのは意味があると考えています。(STORES.jpの)加盟店にはもっと深い悩みはありますが、その支援のためにも、お金の流れが分かっていることが大事だと考えています。